開進丸
7月11日 やったね、大物だね。
早朝5時30分過ぎ、曇り空を気にしつつ大島沖のポイントへ急ぐ。
今日のお客様の稲用さんは、彼が中学生の頃から知っている仲。
「一度、船に乗せてください」
と、以前から話はしていたが、今回漸く遊びに来てくれた。
「今日は、釣れると良いね」
「仕掛けを、一度確認してください」
「これで大丈夫と思うよ」
私としても、稲用さんに何とか楽しい釣りをさせてあげたい。
「ベイトを探して、其処から攻めていくよ」
潮は、ゆっくりとした上り潮が、流れている。
魚探に、ベイト反応が映し出された。
「ほら、良い感じのベイトだよ。ジグでやってみると良いよ」
彼の隣で、私も一緒に竿を出す。
一流し目の最初のアタリは、私に来た。
64センチ、3.4キロのハマチ。
写真は取り損なったが、今日のお土産は釣り上げた。
「今度は、来るよ」
稲用さんの最初のアタリは、大きな鯖だった。
次のアタリは、真鰺がダブルヒット。
ここから、彼の竿にアタリが連続する。
「来た、来ました!」
竿を大きく曲げて、やり取りを楽しんでいる。
「この引きは、ハマチやね」
「そうですね。上がってくるまでドキドキしますね」
62センチ、3.2キロの丸々としたハマチ。
「やった。嬉しいです」と、祝福の握手をガッチリと交わす。
稲用さんには、竿を出して直ぐにアタリがあったのだが、針はずれで逃がしていた。
最初のアタリを取り逃がしていただけに、格別の嬉しさだ。
船を戻して、釣り再開。
「ベイトが増えてきたよ。良い感じで立ち上がっているよ」
良型の真鰺やゴマ鯖が、続けてヒットしてくる。
その中に、時折強いアタリがやってくる。
「来た。来ました」
竿先をコンコンと叩く、真鯛の引きに似たアタリが来た。
二人で「真鯛だと思うね」「そうですよね」と、話をしていると銀白色の魚体が浮いてきた。
「ニベだ…」
良型のニベが上がってきた。
「真鯛かと思った」と、ちょっと残念そう。
風が西から南西にと変わっている。
その風の影響もあり、船の流れる方向が少しずつ変わっている。
「船を戻すよ」
風の影響も考えて、船を持っていく位置を調整する。
すると35センチ超の真鰺がヒットしてくる。
「これだけ有れば、良いよね」
「いい鰺ですよね。嬉しいです」
鰺や鯖は、ポイントを変えても、ヒットしてくる。
可成りの広範囲に、群れが居る様だ。
時折上がってくる、ウッカリカサゴも良型だ。
色々な魚種の釣りを楽しんでいると、稲用さんに又しても強いアタリが来た。
「さっきのニベのアタリと似てますね」
予想どおり、良型のニベが上がってきた。
この直後に、もっと強烈なアタリが稲用さんにやってくる。
「来た!来ました!」
「ドラッグは調整してある」
「してあります。止まりません」
竿が海面に突き刺さる様に、曲がっている。
次の瞬間「あっ、切れた…」
PE2号が切れていた。
「何かに当たったか…」
口惜しい思いが残る。
「多分青物だと思うけど、又チャンスは来るよ」
気を取り直して、次のチャンスを待つ。
「ポイントを変えよう」
船を北方向に走らせて、少し浅場の瀬回りにいるベイトを攻める。
「ジグで良いですか」
「ジグが良いよ。そのまま頑張って」
潮は、北東方向にゆっくりと流れている。
多くはないが、立ち上がったベイトが時々出てくる。
本日のクライマックスが、稲用さんにやって来た。
そのアタリは、突然だった。
「来た!」声と同時にドラッグ音が鳴り響き、ラインが引き出される。
「慌てないで良いよ。無理に引っ張らずに、走るときは走らせた方が良いよ」
「この走りは、鮫じゃないですよね」
「以前、鮫を釣ったときの走りに似ています」
「大丈夫。ゆっくりやろう」
どうにか走りが止まり、ラインが巻き取れる様になってきた。
海面近くに上がってきて、船底に入ろうとしている。
「見えた。鰤だ」
大きな魚体が、海面に浮いてきた。
タモ入れも一発で成功。
81センチ、6.1キロの良型のハマチだ。
「やったね」「嬉しいです」と、再び祝福の握手。
稲用さんの日焼けした顔に、白い歯の笑顔が良い。
「今日は嬉しいです。良型のハマチが2本上がった」
と、喜びは止まらない。
しかし、昼前から南西の風が真南の風に変わり、波もでてきた。
他の仲間も「帰ります」と、連絡してきた。
稲用さんの釣り上げた、大きなハマチを締めにして、帰港した。
船着き場で、両手にハマチを持って記念写真。
稲用さん、好釣果おめでとう。