開進丸
4月29日 焦れったいやら
「今日は、西風が強く吹いてくるかもね。予報の風マークが黄色になってたよ」
「なるべく、凪でいて欲しいね」
港を出て、ポイントを目指して走る海上は、波静かだ。
「鯛もだけれど、この時期はイサキが釣りたいね」
金丸さん、屋敷さん、立喰さんと釣りたい魚の話で、気持ちを盛り上げて船を走らせる。
「この辺りは、瀬が繋がっているから、面白いと思います」
潮は昨日と違って、緩い上り潮。
魚探には、海底付近を中心にベイトが反応している。
ベイトを確認して、直ぐに釣り開始。
「あっ!ワンバイトだけか!」
金丸さんにアタリが来ている様だ。
アタリの出るのが早い。
「来たよ。何か小さい気がする」
金丸さんが、一流し目からアタリを捕らえている。
「食べ頃サイズだね」と、笑顔が出る。
「出足が良いね」
新調の電動リールの扱いを金丸さんに教わっていた屋敷さんにも、アタリが来た。
「小さい真鯛ですけど、リリースします」
と、丁寧に針を外して海に帰す。
「何か、良いことがあるかもですよ」
真鯛の恩返しは、直ぐにアタリとなって帰ってきた。
屋敷さん、立喰さんにダブルヒット。
「竿を叩くけど、何やろう」と、姿が見えるまでの緊張感が笑顔になる。
「あっ…外れたみたい」
立喰さんの獲物は、針外れで逃げてしまった。
屋敷さんには、白甘鯛が上がってきた。
「白甘鯛を初めて釣りました」と、嬉しそう。
しかし、天気予報が当たらなくて良いときは当たるモノで、西風が段々と強くなって白波が立ち始めた。
風と波でアタリが摂りにくくなったのか、バイトがあって竿が曲がっても針外れが出始めた。
「竿先が突っ込むのに、何で乗らないの!」
焦れったい様な、腹が立つ様な気持ちを抑えて、竿を振る。
強くなってきた西風を避けるために、潟よりのポイントに移動する。
「ここは潟に近いけれど、こんな感じの瀬があります。大きな3つの瀬が特徴です」
2流し目に、屋敷さんにアタリ。
「何か来たよ」
ゆっくりとラインを巻き上げると、良型のアラカブが上がってきた。
「美味しそうなアラカブですね」と、笑顔。
その笑顔に答えてくれたのか、西風が静かになってきた。
「波も取れたね。今がチャンスだね。沖の魚礁に言ってみましょう」
すぐに、ポイントを移動する。
「このまま、風が吹きません様に」と、風神様にお願いする。
「船の流れる方向に、沈み瀬と崩れた魚礁があります。暫くこのまま流します」
御三方に説明して、潮に乗せて流していく。
「来た!何か来たよ」
又しても、屋敷さんにアタリ。
「結構な引きですよ。重いし、叩くし鯛かもね」
やり取りを楽しむ姿は、見ていて羨ましい。
「あれ…、ヘダイだ…」
ちょっと、拍子抜けした気分…。
立喰さんにもアタリが来た。
「小さいけど、真鯛です。初鯛ラバの嬉しい釣果です」
初釣果は、私も嬉しい。
「この大きさは群れていますから、まだ来るかも知れないですよ」
徐々に西風が勢いをつけて吹き始めてはいるが、今がチャンスかもと皆さん気合いが入る。
金丸さんにアタリが来て、竿先が舞い込む。
立喰さんにもアタリが来て、同じように竿先が舞い込む。
「同時ヒット!」と、喜んでいたら、「あっ、外れた」
二人とも、針外れで逃げられたしまった。
しかし、直ぐに金丸さんにアタリが来た。
竿先が舞い込み「よっしゃ!」と、気合いが入ると針外れ…「何で…」と、仕掛けを直ぐに落とそうとしたときに、追い食いみたいに竿が曲がる。
「又来た!」
今度こそと、慎重にやり取りを繰り返すが、又しても針外れ。
「なんで外れるの…」と、焦れったいやら、腹立つやら。
西風が、益々強くなって、底取りが難しい状況になってきたとき、屋敷さんに強いアタリ。
強い走りを見せながら上がってきたのは、良型のソーダカツオ。
「走りました」
鯛ラバの柔らかい竿だっただけに、やり取りもスリリング。
しかし、このソーダカツオを期に「風も強くなって波も出てきました。帰りましょうか」
ラストに入って針外れが続いただけに、焦れったい気持ちが残る。
「また、次回このポイントを攻めて見ましょうか」
「風と波で、タイミングがずれてしまったんだろうね」
ちょっぴり口惜しい思いは此処に残して、帰港した。