1月5日 風に向かって
港を出る時に、いつも波の様子を確認する猪崎鼻の岩場に、ウネリが打ち寄せていた。

「波があるね。大島の岩場にも打ち寄せているね」

「そうですね。波がありますね」

脇坂さんと天候の話をしながら、入るポイントを考えていた。

「北東の風が変わっても、直ぐに避難できるところが良いですね」

大島灯台沖に、行ってみることにした。

脇坂さんと一緒の、小野さん、坂本さんにポイントの説明をする。

「内場を通っていきます」

灯台下に来たとき、北東の風が強く吹き、波とウネリが高くなっていた。

「私は揺れすぎると、船酔いするかもしれない」

坂本さんの申し出を聞いていたので、「無理は止めよう」と内場へ入る事にした。

「ベイトを探します」

ゆっくりと船を進めていくと、ベイトボールが幾つもある処があった。

「ベイトが集まっています」

脇坂さん、小野さん、坂本さんが一斉に仕掛けを落としていく。

北東の風に押され、西方向に流れていく。

「来た!」

坂本さんの竿が、大きく曲がった。

「おおっ、やったね」

小野さんが、坂本さんの応援をしている。

ドラッグ音がなり、ラインが出ていく。

「ゆっくりやってよ」

脇坂さんも、船首から応援している。

上がってきたのは、4キロクラスのニベ。

「私は、初めてジグをやります」

「ビギナーズラックですね」と、嬉しそうな笑顔。

北東の風が強く吹き付ける中での、頑張りの釣果だ。

ベイトは、海底から幅にして20メートルくらいまでいる。

少しポイントを変えたところで、今度は脇坂さんにアタリ。

「なんか、小さいです」

余り竿が曲がっていない。

上がってきたのは、ガンゾウヒラメ。

「本ヒラメじゃなかった」と、ちょっと残念そう。

「ベイトの位置に船を戻します」

北東の風に向かって、船を走らせる。

時折、船首から波飛沫が飛んでくる。

「良いですよ」

釣り初めて、又しても坂本さんにアタリが来た。

「余り引かない…、いや、掛かっています」

海中に、長い魚体が見えた。

「アカヤガラです」

「これは、美味しいですよ。刺身が甘くて美味しいです」

脇坂さんや小野さんが、その美味しさを伝えている。

船を戻して流す度に、坂本さんにアタリが来る。

「竿頭やね」

小野さんが、坂本さんに声を掛けている。

「今度のは、走り回りますね」

竿先が、ブルブルと震えている。

「鯖かな…」

上がってきたのは、ソーダカツオ。

「血抜きをしますね。しっかり血抜きをしておきます」

エラの所にナイフを入れて、血抜きをする。

何度もバケツの水を換えて、エラから血が出なくなるまで続けてクーラーの水氷の中へ。

「風が強くなってきましたね」

脇坂さんが言うとおり、北東の風が一段と強くなってきた。

「今日は、帰りましょうか」

「天気には勝てませんね。また、リベンジしましょう」

北東の風に向かって、波飛沫を上げながら帰港した。