開進丸
3月25日久し振りの凪ぎ
朝間詰めは西風がやや強く、潟からの白波もチラホラしていた。
「これ以上は、風が強くなりません様に」
天気も下り坂になっている。
従兄弟の信司と「風が出るかも知れないから、午前中勝負で頑張ろう」と、話して船を出した。
「今の内に行ってみる?」
深場の、新しいポイントに誘ってみた。
深場好きの信司としては、二つ返事で「行きます」
西風を背に受けて、深場のポイントを目指して船を走らせる。
潮は、上り潮が1ノット前後で、流れている。
潮色も青々として、手を浸けてみると、ぬるま湯みたいに暖かい。
魚探には、海底から浮き上がったベイト柱が、何本も出ている。
「良い反応があるよ」
信司が直ぐに、ジグを落としていく。
「何かヒットして来い」
私の心の声だ。
「来た。来ました」
竿先が、ビンビン震えて、元気な走りを見せている。
丸々とした「ほー、太いな」と、思わず声が出るサイズの真鯖だった。
「魚探に出ている反応は、鯖の群みたいね」
船を戻して、再度、このベイトを攻めてみる。
ベイト柱が、今度はベイトボールになっていた。
「来ました…。でも、走りません」
「エソかな…」
やがて、姿を見せたのは、ウッカリカサゴだった。
「ジグが岩にカツカツ当たっていましたもんね」
海底の起伏は、岩場のようだ。
この周辺に、確認しているポイントが数カ所有る。
その中の、海底に変化の大きいポイントを、探ってみる。
着底と同時に、信司の竿が曲がった。
「直ぐに来ました」
信司が、竿の曲がりを楽しみながら、ラインを巻き上げる。
「あれ…、走らない…」
竿には、充分な重量感が伝わっている。
「おっ、でかいカサゴだ」
ウッカリカサゴの老成魚だ。
「これ、良いよね」
思わず笑顔になる。
満潮を過ぎて、引き潮になっているが、潮の動きは変わらない。
しかし、午後からは私に用事が出来た。
「信司、昼過ぎに上がろうか」
「了解です」
次の、釣行に期待して帰港した。