開進丸
12月10日やっぱり時化てるね
沖波止を回ると、直ぐにウネリが高くなってきた。
「やっぱり時化てるね」
従兄弟の信司と、ウネリを恨めしく見ていた。
船を出す前に、船仲間からも「時化てますよ」と、連絡は来ていた。
沖合まで出られなくとも、どこかで竿が出せれば…。
裸バエの少し沖まで出たところで、ウネリの高さに外海での竿出しを諦めた。
「信司、内場に行ってみるか」
「野瀬の灯台周りをやってみますか」
船首を内場に向けて、船を走らせる。
内場に入ると、波も穏やかになっている。
しかし、北風は強く吹いてくる。
水島の方を見ていると、一瀬の高場よりも高い波飛沫が上がるのが見える。
水島の周りは、高い白波だらけになっている。
野瀬の灯台周りから、釣りを始める。
船の流される速さが、0.5ノット前後。
強い北風の影響を差し引くと、潮自体は余り動いていない気がする。
そんな中でも、時折良い感じのベイト反応は出てくる。
「何か来ました」
一瞬「やった」と思ったが、上がってきたのはエソだった。
海水に手を浸けると、暖かい。
外気がそれだけ低いのだろう。
その後も、ポツポツとエソがアタルが、元気が出ない。
場所を移動する。
「何か来ました」
「また、エソやろか」
二人で、海中を覗き込む。
ガンゾウヒラメが上がってきた。
「煮付けやね」
今がノッコミなのか、結構肉厚に感じる。
「ボーズではないね」
と、二人で大笑いする。
干潮の潮が動き出すと、流れる速さが1ノットを超してきた。
「少しは、潮が動き出してきたかもね」
信司の竿をチョット借りて、私もジグをしゃくってみた。
当たってくるのは、やっぱりエソ。
「信司、鯛ラバに変えてみたらどうかな」
鯛ラバに変えて暫くすると、強いアタリが来た。
私が魚探に目をやった隙に、アタリが来たようだった。
ラインが切られて、仕掛けが無くなっている。
「何やったかね…」
「残念…」
直ぐに仕掛けを作り直して、鯛ラバを落とす。
エソとは違うアタリが来る。
「多分、エソではないです」
上がってきたのはガンゾウヒラメだったが、これまた肉厚の良型だ。
「此なら、刺身が取れそうやね」
「そうですね。刺身と煮付けですね」
この後も、何らかのアタリが続くのだが、なかなか食い込まない。
「掛かった」と思っても、直ぐに外れる。
「多分、ガンゾウやろうね」
少しずつ、流す場所を変える。
その一方で、北風が益々強くなり、寒さが増してくる。
沖から入ってくるウネリも高くなってきたことから、帰港することにした。
「今度帰ってくるのは、年明けてからやね」
「そうですね。竿を磨いておきますね」
「来年も又頑張ろうね」
チョット早い、年末の挨拶だった。