五右ェ門
前夜からの雨が降り止まぬ中、それでも竿を出すことを選んだ。選んだのは、風と雨をかわしやすい条件を持つ小場所。経験上、この条件下でも魚影が確認できる可能性があると踏んだ。
釣りを開始してしばらくは、アタリらしい反応もなく、時間ばかりが過ぎていく。小ぶりなアジが二尾ほど釣れるも、それが群れの先駆けではなかったことは、その後の静けさが証明していた。
雨脚が一層強まってきたのを機に、車に戻り、暖を取りながらしばしの休憩をとる。無理に続ける理由もない。釣りは、自然と対話する行為。焦りは何も生まない。
やがて、夜も深まりきったころ、フロントガラスを叩く雨音が静かになる。潮の匂いが車内に入ってくるのを感じながら、ゆっくりと準備を再開した。
午前4時過ぎ、東の空がうっすらと白み始める頃、ようやく水面に変化が見えた。小魚たちがざわつき、水面が命を宿し始める。それを合図に、こちらも集中力を高める。テンションフォールでカウントを取りながらリトリーブを続けると、コツンと明確な反応。
そこからは、一投一釣。群れが入ったのだろう。サイズこそ選べなかったが、コンスタントに数を稼ぐことができた。魚たちの反応が止まったころには、すっかり朝の光に包まれていた。
状況を見極め、無理をせず、チャンスを待った結果が実を結んだ。自然の機微に耳を傾けることで得られる釣果には、何よりの満足感がある。






















