11月3日風に吹かれて

今日も、水平線から上がる朝日は、綺麗だ。

「今日も、よろしくお願いします」

いつもの挨拶をして、釣りを開始する。

「潮はどうですか?」

「下潮が、抜ける感じがします。ジグに絡んできませんね」

下潮が動いていないようだ。

ベイト反応も、それに同調するように良い反応ではない。

一流し目の途中ではあるが、移動を決断する。

朝間詰めの、貴重な時間帯は逃したくない。

移動と途中に潮の色を見ていると、昨日からの「菜っ葉潮」がそのまま残っている。

最近は、満ち潮や引き潮で潮が入れ替わる傾向は少なく、場所によって潮が違う気がしている。

また、一日のどこかのタイミングで、沖から青い潮が入ってくる。

黒潮の枝になっている潮が、蛇行しているのだろうか。

次のポイントに入ると、矢越さんにアタリが来た。

指4本のタチウオが、ヒットしてきた。

「ここは、下潮が効いていますね」

船尾では、山下さんにも何かがバイトしてきた様だが、針掛かりまでは行かなかった。

2流し目に入ると、徐々にベイト反応に変化が出てきた。

「下潮が動き出してきたかな」

少しだけ、期待感が膨らんできた。

「来た、来ました」

矢越さんに、大きなアタリが来た。

「針を少し小さくした分、不安ですね」

「大丈夫ですよ。ゆっくり時間を掛けましょう」

塩田さんが、タモ係でスタンバイしている。

「サメかな…」

「ニベかもよ」

「ニベか…。だったら嬉しいような、悲しいような」

そんな会話を楽しんでいたら、姿が見えてきた。

「鰤です」

矢越さんが浮かす、塩田さんが無事タモ入れする。

80センチ、5キロの鰤が上がってきた。

潮が、段々と良くなってきているようだ。

山下さんも、何かを掛けた。

竿が突っ込んだが、針はずれ…。

「何で外れるかな…」

「さあー、今からですね」

元気が出てきた。

それと同じくして、風が北北東に変わって、沖から白波が出始めてきた。

次に考えていたポイントの方向から、風が来ている。

北北東の風が吹き始めたら、小さかった波が高くなり始めた。

下潮が北に流れ、船は北北東の風に押される。

「1.5ノット前後になっています」

下潮の流れと風の吹く方向が、真逆になってしまった。

「ラインが出て、着底が取りづらくなりましたね」

直ぐに浅場に移動する。

塩田さんにアタリが来た。

「何か、根魚みたいですね」

上がってきたのは、オオモンハタ。

横で、山下さんも竿を曲げている。

上がってきたのは、小型のアカヤガラ。

「針はずれが続いていたので、チョットは良いかな」と、山下さん。

しかし、浅場も風に押されて、時折、高いウネリが寄せてくる。

風を避けようと内場にはいるが、回り込みの風が吹き寄せてくる。

時折、当たってくるのは鯖。

「真鯖ですね」

「首折り鯖にしましょう」

バケツに海水を汲んで、血抜きをする。

その鯖も、連続ヒットには成らない。

「今日は、これ以上粘っても、移動するポイントも限られているし、アタリも出そうにないですね」

良い感じの出足で、気合いが入っていたのだが、北北東の強風に吹かれて意気消沈した格好になった。

「諦めて、帰りましょう」

北よりの強風に釣りを邪魔されて、諦めることが多い最近だ。