10月26日鰺の日
港を出ると猪崎鼻の岩場に、大きな波飛沫が上がっている。

「この波じゃ、沖に出るのは無理かな」

ちょっと、気後れした感じになってしまう。

大島の南側に、船を走らせる。

こちらに来ると「あれっ、出られるかな」と思うくらいに、波がないように見える。

そのまま沖合に向かって、船を進める。

凪ではないが、思ったよりもウネリも小さく、北西の風も弱い。

大磯先輩に、この状況を連絡。

暫くして、大磯先輩もやって来た。

潮の流れを見てみると、上り潮が沖に払い出している。

「この潮なら、青物も期待できるかも」

旭先生に「やりましょう」と、竿出しを勧める。

一流し目は、何の反応も出ない。

同じポイントを、もう一度流してみようかとも思ったが、ベイト反応の少なさも有り、ポイントを移動する。

今日は、久し振りの旭先生と一緒だし、私も竿を出させてもらう。

「旭先生、私も竿を出しますね」

「おおっ、一緒にやりましょう。大物が釣れそうですね」と、笑顔で答えてもらった。

旭先生は鯛ラバで、私はジギングで釣りを開始する。

魚探には、ベイト柱が立ち上がって、何かが潜んでいるような期待感がある。

すると、私に直ぐにアタリが来た。

35センチほどの真鰺だった。

「旭先生、真鰺が来ましたよ」

チョットだけ、自慢げに掲げる。

今度は、旭先生にアタリが来た。

これも、35センチを越すような良型の真鰺だ。

「これだけの大きさが有れば、充分ですね」

「旭先生、こんやは鰺の塩焼きですね」と、笑顔になる。

ベイト反応のあるところを、流していく。

一流しに、3,4度位のアタリがくる。

真鰺のアタリなのだが、その走りはチョットした青物を想像させるくらいの感じだ。

「今日は、鰺の日みたいですね」

「良い日に当たったかな」

仕掛けを落としていくと、ホール中に当たってくる。

「先生、軽めのジグに変えましょうか」

「竿がこの鯛ラバ用しかないけど、いいやろか」

「ゆっくり、しゃくりましょう」

スローにしゃくると、鰺のアタリが来る。

しかし、外れるアタリも多い。

「これが外れなければ、既にクーラーは満タンかもですね」

「なかなか、上手いこと行かないね」

二人で楽しく会話しながら、竿を出す。

真鰺は、順調に当たってくる。

カイワリも当たってくる。

私の仕掛けには、タチウオがヒットしてきた。

指4本クラスのタチウオだ。

丸々とした、ゴマ鯖もヒットして力強い走りを楽しませてくれる。

旭先生に、今日一番の大当たりが来た。

ラインがドンドン出ていく。

「慌てなくて良いですよ。ゆっくり楽しみましょう」

旭先生の横で、サポートする。

「相手が走るときは、好きなだけ走らせてください。止まったら巻きましょう」

走らせては巻き上げる、又、走られては巻き上げるを繰り返す。

「青物かもしれませんね」

我々の中では、青物が思い描かれている。

「見えてきました…けど…、ん…サメです」

お互いに、顔を見合わせガックリ…。

「サメか…、青物かと思うちょったとに…」

1メートルチョイのサメが上がってきた。

タモに取り込み、針を外して直ぐに海に帰す。

「旭先生、今のやり取りでサメが捕れましたから、次は何が来ても大丈夫でしょう」

二人でガックリして、二人で大笑いした。

この後も、35センチクラスの真鰺のアタリは、ポツポツと続いた。

しかし、風が南に変わり空には雨雲が出始めたこともあり、帰港した。

「旭先生、鰺の引きが楽しかったですね」

「次も、釣れると良いがな」

「海の神様次第ですかね」

楽しい話をしながら、港を目指した。