9月19日一つテンヤが壊れた
タチウオの引きの強さを、この目で確認した。

「一つテンヤの針がこんな曲がり方をする…」

岡本さんの手元にあるのは、針が曲がり基部がガクガクに成った、一つテンヤだった。

魚探に映るベイト反応は、イマイチ良いとは感じられない。

しかし、海底から浮き上がったような反応が出てくると、何らかのアタリが出てくる。

「当たるけど、途中で外れる…」

金丸さん、渕上さん、岡本さん、吉野さん、のスタートは焦れったいモノになった。

しかし、金丸さんが鰺やアヤメカサゴのアタリを捕らえ始めた頃から、少しずつ釣果に繋がり始める。

吉野さんに強いアタリが来た。

ドラッグ音が鳴り響き、ラインが引き出される。

ラインを巻き取っては、その倍引き出される。

青物と思われる魚との、格闘の時間が続く。

そろそろ見えてくる頃だ、と思いタモを準備する。

すると「あっ…」吉野さんの竿から生体反応が消えた。

「針が伸びました…。返しも折れています…」

物静かな吉野さんが、悔しそうな表情をしている。

今度は、渕上さんにアタリが来た。

型の良い、ウッカリカサゴだった。

一つテンヤでタチウオを狙っている岡本さんにも、アタリが来ている。

やや堅めの竿で、小さな前アタリを的確に捉えている。

合わせの瞬間「ビシッ!」と、鋭い音がする。

掛かった瞬間に、いきなり竿が大きく曲がる。

次の引きで、竿先が海面に突き刺さるばかりに曲がる。

「針の掛かりが浅いと、この時に外れる」

タチウオも型が良さそうだ。

岡本さんに、又アタリが来た。

指4本くらいのタチウオが上がってきた。

金丸さんにもアタリが来た。

大きいウッカリカサゴが上がってきた。

鰺、鯖は吉野さん、金丸さん、渕上さん、ともにポツポツとヒットしてくる。

そんなアタリが連発しているときに、シーラが目の前に現れた。

見た目に「1メートルは超している」大きさだ。

金丸さんが、シンキングタイプのルアーを投げ込み海面近くを引いてみた。

「来た!」

ラインを引き出し、沖合で大きなシーラがジャンプしている。

“力対力”の勝負だ。

大きなシーラが、船の周りを一周する。

船首に立ち、力を入れて浮かしにかかる。

船に引き上げたシーラは、大きかった。

1.3メートル、10キロの大物だった。

「疲れた」

シーラの引きの強さに、体力を相当すり減らした表情。

このシーラの後に、冒頭のドラマが待っていた。

岡本さんが、一つテンヤに鰺子を縛り付けて、タチウオを狙う。

海底に届いてから、独特のしゃくりで、狙っていく。

「出来れば、指7本以上が欲しい出すけどね」

小さな前アタリが来た。

岡本さんの合わせが入った。

「乗った!」

次の瞬間、竿先が海面に突っ込んだ。

岡本さんが、腰を落として、その強い引きに耐える。

耐え続けた、次の瞬間「あっ…外れた」

仕掛けを巻き上げると、テンヤ仕掛けを見てビックリ。

テンヤ仕掛けの針が横に曲がり、固定しているはずの基部がガクガクして、餌が固定できなくなっている。

「テンヤが壊れた」

岡本さんも、こんな体験は初めてとの話だった。

「もしかしたら、帳大物のタチウオやろか」

岡本さんのドラマの後、渕上さん、金丸さんにタチウオが連発。

「こんだけタチウオが寄っていれば、中には超大物もいると思いますね」

「気持ちが楽しくなってきた」

「次、近い内にリベンジしますよ」

帰りの船中は賑やかだった。

針を伸ばされた吉野さん、針を曲げられ、テンヤを壊された岡本さん共に、気持ちは次に向いている。