開進丸
7月23日フグとナブラ
出足は、余り良い感じではなかった。
ベイト反応があっても、イマイチアタリが出ない。
バイトが有っても、針掛かりしない。
「どうしたもんだろう…」
色々と考え込んでいた時、Zさんにアタリが来た。
指3本くらいの太刀魚が上がってきた。
今度は、上野さんにアタリが来た。
竿先が何度も突っ込みを見せている。
「青物かも。ゆっくりやって下さい」
しかし、リーダーが切られた。
ドラッグ調整が少しきつかったかも…「また、来ます!」
その後も、Zさんに鰺が来た。
上野さんには、良型の鯖や太刀魚がヒットしてきた。
この頃になると、フグの動きも活発になってきた。
ジグや鯛ラバが、ホール中に切られる。
仕掛けが急に軽くなって、手元から重量感が消える、あの嫌な感覚が出始めた。
上野さんが大きなアタリを捕らえても、ラインにフグの付けた傷が有ると、走りをためている途中でラインが切れる。
何度か、そんな場面があった。
Zさんもフグに悩まされながら、太刀魚やマルソーダ鰹のアタリを捕らえていく。
そのZさんに、これまでと違うアタリが来た。
竿も、良い感じの曲がりを見せている。
「重量感が有りそうですね」
「走らないけど、重みがありますね」
上がってきたのは、良型の真ハタだった。
本命としている真鯛や青物のアタリは、なかなか出ない。
フグのアタリは、不意にやってくる。
フグにラインを切られて、仕掛けを作り直している時、沖合にナブラのような水飛沫が見えた。
「あれって、ナブラですよね」
「飛沫が上がってますね」
「行ってみましょう」
上野さんが船首に立ち、ナブラの進んでいく方向を指し示してくれる。
近づくと、カタクチイワシが大きなボール状になっている。
その周りに、本鰹やシーラ、ヨコワ等々が取り囲んでいる。
海中は鰯の鱗が散乱しており、もの凄い状況になっている。
船を止めてみていると、海中から鰹などに追い上げられた鰯ボールが浮き上がってくる。
それを追い掛けて、鰹やシーラ、ヨコワがもの凄い水飛沫を上げて、襲いかかる。
底にジグを投げ込んでいく。
直ぐに何かがヒットしてくるが、その走りは余りに速くて、指でドラッグ調整すると「あちっ」と軽く火傷をしてしまうほどだ。
海中に見えるシーラは1メーター超、ヨコワも7キロは超しているように見える。
針掛かりすると、もの凄いスピードで走り回る。
鰹に至っては、もの凄い数が走り回っている。
船の下に走り込んだ獲物を何とかしようとするが、ラインが切られたり針が外れたり。
針掛かりして上がってくるのは、小型のヨコワ。
鰹も1キロから2キロくらい。
ナブラの物凄さに気持ちの高ぶりを覚える。
その大忙しさに、写真撮影は殆ど忘れてしまっていた。
その中に、とんでもない大物が突っ込んできた。
目測で4メートル有りそうな大きなサメ。
仕掛けを手に持って、暫くは眺めていた。
鰯ボールも段々と小さくなっていく。
鰯ボールが小さくなっていくと、あれだけ走り回っていた魚たちも姿が見えなくなってしまった。
鱗が残る海域に仕掛けを入れて、ジグをしゃくると上野さんにアタリ。
丸々と太った本鰹が上がってきた。
ナブラ立ちの騒動が鎮まると、海の青さが目立ってくる。
忘れていた暑さも戻ってきた。
フグにやられ、ナブラに騒動した一日だった。