4月13日 北風に立ち向かってみたけれど
「明日は、風が出る予報になっているので、早く出ようか」

午前6時前に従兄弟の信司と、期待と不安を胸に港を出る。

沖は、北風が既に吹き始めていた。

私たちよりも早く出ていた、大磯先輩から電話が来た。

「おはようございます。今どこにいる」

「水島近くにいます。北風が吹いてますね」

「そっちに行った方が正解やと思う。こっちは、北風が強くてバタバタしちょる」

「波も出てますか」

「釣りにならんから、帰るわ」

まだ午前6時30分過ぎの時刻。

相当な風と波が出ている様だ。

「向こうは北風が強いらしく、釣りが出来ないと言ってきたよ」

「頑張らなくちゃ」

既に、北風が強くなり始めている。

潮は、上り潮が2ノット近くで流れている。

「少し、潮が落ち着いていそうな所に移動しよう」

少し浅い、水深50メートルあたりに移動する。

潮は0.5ノット前後と、急に動きが遅くなった。

信司が仕掛けを入れていく。

「何か来ました」

アタリは、直ぐに来たようだ。

アオハタが上がってきた。

「最近、アオハタを見らんかったね」と、ちょっと嬉しい。

私も竿を出してみた。

真鯛と思われるアタリは来る。

いきなり走り出して、竿先を叩く真鯛独特のアタリだ。

しかし、8号リーダーが切られたり、後少しのところで針が外れたりと、口惜しい雄叫びを上げたくなる。

信司にアタリが来た。

「多分、真鯛だと思います」

ゆっくりとラインを巻き上げながら、真鯛の引きを楽しんでいる。

食べて美味しいサイズだ。

小型だが、真鯛を釣り上げて、少しホッとした。

「波が高くなってきたね」

「風も、ますます強くなってきましたね」

大島の内場に入る。

ここも北からの強風で、白波だらけになっている。

周りを見回しても、私たち以外に2隻の船が居るだけ。

北風を真正面から受けながら、アタリを探る。

信司にアタリ。

型の良いホウボウが来た。

「良い型のホウボウですよね。最近は高級魚ですよね」と、クーラーに納める。

一段と強くなった北風に、移動するたびに波しぶきを被る。

「信司、帰ろうか」

「風に勝てませんね」

北風に立ち向かってみたけれど、最初から負けは決まっていた。

午前11時まで、なんとか粘ってみたが残念…。

波しぶきを、何度も被りながら帰港した。