7月29日 もどかしい気持ち
出足は、順調だった。

下り潮がゆっくりと流れる中、魚探にはベイト反応が出ていた。

「今日の狙いは、青物と真鯛」

釣りの主役となる、魚を求めて竿を振る。

吉行さんにアタリが来た。

良型のイサキ。

ベイト反応が海底から、15メートル位の高さまで出ている。

塩田さんにもアタリが来た。

上がってきたのは、大きな鯖。

この鯖の魚影が、海底付近に出ているベイト反応の上に出ている。

仕掛けを落としていくと、海底に届く前に鯖がヒットしてくる。

仕掛けがスムースに着底出来れば、イサキや鰺がヒットしてくる。

鯖が邪魔をしなければ、イサキや鰺の釣果が上がって行く筈なのだが…。

小型の鯖は、全て海に帰す。

暫く鰺やイサキ、鯖のアタリが続いた。

「なかなか狙いのアタリが出てこないですね」

「主役が姿を見せてくれない」

ジグの重さを変え、鯛ラバの色を変えて、青物に真鯛を狙っているが、思う様に行かない。

「思う様に行かないのが釣りですよ」

「じゃあ、ポイントを変えましょう」

船を南東方向に走らせる。

チョット大きな、古い魚礁が有るポイントだ。

ポイントについて直ぐに、塩田さんに強いアタリが来た。

「これは、青物です。これを待っていました」

竿先は海面に突き刺さる様に、獲物が強烈に走っている。

ドラッグ音が、気持ち良い感じの音を立てている。

もう少しで、姿が見えそうだ。

その時、塩田さんと吉行さんの声が同時に上がった。

「どうしました」

「外れました…」

後少しのところで、針が外れてしまった。

悔しがる塩田さんだが、針をチェックして直ぐに落としていく。

吉行さんと塩田さんに同時にアタリが来た。

吉行さんのアタリは、鯖だった。

「又、鯖です」と、タモ入れ前に振り上げた。

塩田さんのアタリは、待望のハガツオ。

「やった、ハガツオが来た」と、笑顔だ。

1.5キロくらいの良型のハガツオだ。

吉行さんに、鯖とは違うアタリが来ている。

「重いです」

上がってきたのは、大きなウッカリカサゴ。

「これは、刺身が取れますね」と、嬉しそうだ。

台風の影響も余り感じないほどの凪だが、時折、波長の長い大きなウネリが寄せてくる。

岸の方では、岩場に当たって砕ける波飛沫が、上がっているのが見える。

風が弱い分、波が出てないが、台風の影響は岸近くには出ている。

今日は、鯖に翻弄された形となった釣りだが、納竿直前に吉行さんに強いアタリが来た。

竿を叩くアタリに「真鯛かも」と期待が膨らむ。

慎重にゆっくりと、ラインを巻き上げていく。

途中の獲物の走りも、やり取り中は楽しいモノだ。

上がってきたのは、4キロクラスのニベだった。

「残念、真鯛ではなかった」

と、ちょっぴり口惜しそう。

「今日は、最後まで真鯛が出なかったですね」

「残念です…」

「大丈夫です。次には必ず来ますよ」

今日の主役と決めて、頑張ったが青物と真鯛の前に鯖がヒットしてくる、もどかしい気持ちの釣りになった。

「又、次回、頑張りますよ」

塩田さんも吉行さんも、帰りはすっきりした表情だった。