7月13日 海中の悪い奴
前日までに、確かに予兆はあった。

しかし、場所から言うと、限定的な状況だった。

水島沖の瀬回りに、フグの姿が見られるのは分かっていた。

そのフグが、今日は広範囲に広がっていた。

水深70メートルのベイト探しから始まった今日の釣りは、出足はまずまずだった。

西村さんが、ウッカリカサゴや鯖を釣り上げ、期待感が膨らんでいた。

原さんにも、良型の真鰺がヒットしてきた。

この大きさの鰺、鯖が魚探に反応する正体なら、それを追いかけ回す青物は大物だろう。

期待が、益々大きくなっていった。

しかし、何か変だ。

潮は、下り潮が沖に払い出していた。

速さは0.7ノット前後で丁度良い感じだ。

ベイトを探して、仕掛けを落としていくが、思った様なアタリが来ない。

原さんも、西村さんも丁寧に攻めていくが、苦しい状況だ。

ポイントを移動するため、仕掛けを回収していた。

「あれっ、切られた…」

PEラインが、何者かに切られている。

ポイント移動の間に、仕掛けを作り直す。

今度は、水深のあるポイントへはいる。

ここで、西村さんが大きなアタリを捕らえる。

「重いです。走りは余りないですが、重いです」

時間を掛けて、ゆっくりと巻き上げていくが…途中で針外れ。

「あー、……」

口惜しさで、声にならない。

その後に原さんの仕掛けに、小さな金フグが針掛かりして上がってきた。

「えっ、こんな深さの処にも居るのか」

ちょっと、驚いた。

次に、ベイトを求めて移動したポイントでは、大切なジグをフグに持って行かれた。

「ベイト反応は、海底から15メートル以上の立ち上がりが、繋がっています」

期待を持って、仕掛けを落としていく。

西村さんに、良型の真鰺が来た。

「これから、アタリが来るかも」と、期待する。

原さんに、今日一番のアタリが来た。

竿が大きく曲がり、獲物の大きさを伝えている。

「よっしゃ、来た!」

私も、思わず気合いが入り、声が出た。

しかし、カメラを構えようとしたとき「あっ、外れた」

無念の針外れだ。

「大丈夫です。又来ますよ」と、越えかけする。

でも、状況は変わってきた。

「あっ…、ラインが切られた」原さんのラインが切られた。

暫くすると「あっ、私も切られた」西村さんのラインも切られた。

ジグを結び尚して仕掛けを投じると、ここでも、フグが針掛かりしてきた。

鰺や鯖のベイト反応は、ビックリするくらい出ている。

「ポイントを移動しましょう」

残り時間も余りない。

「もう少し、頑張りましょう」

船を北西方向に走らせて、岩場の多いポイントにはいる。

「水深45メートルくらいです」

「此処は、先日ハマチが出ています。何とか、頑張りましょう」

すると、原さんにアタリが来た。

上がってきたのは、1キロクラスのオオモンハタ。

「漸くかな…」

少し、ホッとした様な、口惜しい様な感じだ。

西村さんにも、アタリが来た。

上がってきたのは、丸々としたビール瓶みたいな鯖。

「太い鯖…」と、ちょっと驚き。

結局、原さんのオオモンハタ、西村さんの大きな鯖を最後に、今日の釣りを切り上げた。

「こんだけ、フグに邪魔されるとは、予想もしていませんでした」

口惜しい思いを持って、帰港した。