6月5日 凄く頑張ったけど、潮が急変
出船の準備をしていると、近くに係留している仲間の船もエンジンが掛かった。

「向こうですか?」

「向こうに行きます」

と挨拶して、港を出る。

早朝は、波も風も穏やかで、自然と船のスピードも上がっていく。

「最近は、割と真鯛が上がっています。今日も上がると良いですね」

毎度のことだが、期待と不安を持って、ポイントを目指す。

「潮の色はやや緑掛かっていますね。ベイトは、底付近に集まっています」

下り潮が南方向に、ゆっくりと流れている。

長代さんと西村さんが、直ぐに釣り開始。

「良い雰囲気のある海ですね」

西村さんの日南での海釣りは、今日が初めてとの事だった。

「是非、大物を釣ってくださいね」

笑顔で話をしていると、早速、西村さんにアタリが来た。

「来ました」

竿先を小刻みに叩いている。

「イトヨリ鯛かも知れませんね」

予想どおり、上がってきたのは良型のイトヨリ鯛。

まずは、最初の1匹が釣れてホッとした気持ち。

今度は、長代さんにアタリが来た。

「余り引かないですね」

ゆっくりと、ラインを巻き上げるとイトヨリ鯛が姿を見せた。

「これで、ボーズは無くなりました」と、笑顔。

二流し目に入ると、西村さんにアタリが来た。

竿が、良い曲がりを見せている。

「これは、良い型の魚ですよ」

期待を持って、ゆっくりと針掛かりした獲物を浮かしてくる。

海中に白く光る、大きな魚体が見える。

「おお、見えましたよ。もう少しです」

その直後…

「あっ……。外れた……」

海中に針外れした獲物が、反転して逃げ行く様子が見えている。

タモを入れても、届かない。

「あー…もう少しだったのに…」

西村さんの口惜しさが、私にも自分の事として伝わってくる。

「くそっ、もう少しだったのに…。大丈夫です。まだ来ます」

西村さんに掛けた言葉だが、自分自身にも掛けていた。

何とか、気持ちを切り替えて、西村さんが竿を出す。

すると、直ぐに次のアタリが来た。

上がってきたのは、良型のイトヨリ鯛。

少しだけ、気持ちがホッとしただろうか。

3流し目に入り、ポイントを移動する。

「ちょっと、深場になります」

移動して一投目に、長代さんに強烈なアタリが来た。

竿先が、海面に突き刺さるほどの、曲がりだ。

「ゆっくり行きますよ」

少しずつ、ラインを回収していく。

「きっと、大きな鯛ですよ」

暫くすると、海中に淡いピンクの魚体が見えてきた。

「真鯛です。大きいです」

74センチ、3.3キロの見事な真鯛。

綺麗なピンク色が、お日様に照らされて綺麗だ。

長代さんと西村さんが祝福の握手。

とっても嬉しい光景だ。

「よし、もっと頑張るぞ」私も、自然と気合いが入る。

船を戻して、2流し目の最初のアタリも長代さんに来た。

結構に引きを見せて上がってきたのは、鮫だった。

「ええー、鮫か」

針を外して、直ぐに海に帰す。

ここから、潮が急に変わってきた。

何故かアタリが、ピタッと止まってしまった。

他の仲間に連絡しても「潮が動かなくなった」と、苦戦していた。

私たちも、2度ほど潮を探して移動を繰り返した。

時折、お二人にアタリは来るが、食いが浅くなってしまった。

「針掛かりしないですね」

長白さんにアタリが来たが、上がってきたのはガンゾウヒラメ。

なんとか大物が欲しいのだが…。

北東の風も段々と強くなり、あちこちで白波が立ち始めた。

「もう1ヶ所、攻めてみましょう」

波が高くなってきているが、真鯛の実績のあるポイントを攻めてみる。

「ベイトは映ります」

それでも、潮が2枚潮になり水温に変化が出ている様子。

「帰りますか」

急変した潮には、勝てなかった。