3月3日 調子よ上がれ
私自身は全然気が付かなかったが、夕べの地震が、少し気になった。

地震が起きると、釣果に影響することがある。

「何も影響が無ければ良いね」

私の従兄弟の信司が、久し振りに来てくれた。

「昨日帰ってきました」

「3日の金曜日、出て来いよ」と、私から日程を決めての釣行。

前日の強風が気になってはいるが、多分今日は治まるだろう。

ポイントに入ると、潮はゆっくりとした吐き出しの上り潮。

しかし、潮の色はやや黄緑色している。

「上り潮にしては、色が悪いね。水温が下がっているね」

信司が竿を出していく。

最初は、ジギングから入るようだ。

直ぐにアタリが来たが、針外れ。

「いきなり、ガツンと来たんですけどね」

「又来るよ。大丈夫」

今度は鯛ラバに切り替えて、攻めていく。

小さいけれど、ガンゾウヒラメ、レンコダイと当たってきた。

「このまま調子が上がってくると良いね」

潮の流れも水深の深いところは2ノット近くで流れているが、比較的水深が浅くなると0.6ノット前後に遅くなる。

「この流れなら、釣りやすいね」

潮行きも、段々と真北に向かうようになってきた。

「来た!なんか来ました」

竿先を叩く真鯛のアタリのようだ。

「鯛だと思うのですけど、外れないと良いですね」

「ゆっくりやれよ。慌てんで良いよ」

やがて、海中にピンク色の魚体が見えてきた。

2キロクラスの、良型真鯛だ。

「やったね。ノッコミの走り鯛だね」

真鯛を手に、信司の笑顔が良い。

信司と並んで竿を出していた私にも、アタリが来た。

私のは型の良い、レンコダイだった。

「信司の真鯛には負けたね」と、二人で笑う。

朝の内は、北西の風が少し吹いていたが、10時を過ぎる頃には風も止んで、べた凪になってきた。

「ポイントを変えてみようか」

北東の方向に、船を走らせる。

風もなく、波も穏やかだと、船の走りも心地よい。

後ろを振り向くと、白く延びる航跡が一本の線になり、気持ち良い。

「ここは、ベイトは少ないけれど、海底付近に集まっているよ」

又しても、レンコダイ、ウッカリカサゴと信司が連発する。

「調子が出てきたね」

「良い感じになってきました」

海底付近を集中して攻めている信司に、強いアタリが来た。

上がってきたのは、3キロ弱のニベだった。

ここから、信司のペースが上がってきた。

「何か来た」

ドラッグからラインが出ていく。

「ドラッグを緩めに調整しています」

慌てることなく、慎重にラインを巻き取っていく。

「あっ、白甘鯛です!」

「計量して見ようよ」

「2.1キロ有りますね。自己新記録ですね」

信司の弾けるばかりの笑顔が良い。

「ジャンケンしないか」

と、からかうと「帰って妻と息子達に出しますよ」と笑顔で返された。

笑顔での会話は、楽しい時間だ。

信司のペースは、此処で止まらなかった。

「信司、最後に今日最初に入ったポイントに戻ってみないか」

「ジグで当たった所ですね」

「そうだよ。何か来るかも知れないよ」

船を、南に向けて走らせる。

到着して、直ぐに釣りを再開。

暫くして、信司にアタリが来た。

ゆっくりと、ラインを巻き上げていく。

「鯛だと思います」

信司の言葉通り、真鯛が姿を見せた。

2キロ弱の雌の真鯛。

「綺麗な真鯛だね」

「最後が真鯛で嬉しいです」

この真鯛で、今日の釣りを締めることが出来た。

「大潮の後の、下り中潮は良い感じですね」

「そうやね。下り中潮俺も好きだね」

「明日も、良い感じかも知れませんね」

「信司の真鯛を切っ掛けに、調子よ上がれと海の神様に頼みたいね」

帰りの会話も、楽しく弾んだ。