2月4日 潮を探す
「釣りは潮が全て」

この言葉をこれまでに何度聞かされ、何度口に出してきた事か。

「下潮が、変な動きに感じませんか」

塩田さんの言葉に、私も同じ感覚を覚えていた。

「2枚潮ですね。上潮が上滑りしている感じです」

釣りの途中に、塩田さんが言われたこの言葉が、今日の釣りの苦戦を全て表している気がする。

最初に入ったポイントは、「青物が狙いたいですね」

と、ベイトが最も多く集まっているポイント。

しかし、ワンピッチやスローでジグをしゃくっても、何の反応も出ない。

北西の風が、やや強く吹いているが、船は潮に乗って北に流れる。

「良い感じの上り潮ですけどね…」

塩田さんが、鯛ラバに替えてアタリを捕らえた。

走る様子も、強く引く様子も無く上がってきたのは、アカヤガラ。

「美味しい魚ですね」と、クーラーへ。

この後、又しても潮は沈黙する。

「ポイントを変えましょう」

古い魚礁があるポイントへ、移動する。

「ベイトは、所々立ち上がっていますね」

頑張ってジグや鯛ラバを駆使するが、アタリが出ない。

「潮の動きは、0.3ノットくらいですね」

「別の魚礁に行くか、昨日そこそこの釣果のあった処に行くか、どうしましょうか」

「釣果のあったところに行きましょう」

船を北東方向に走らせる。

天候が曇り始め、風が北東からに変わり始めた。

「波が出ますかね」

「ウネリは、来ていますね」

7ノットくらいで走りながら、沈み瀬を回ってベイトを探す。

所々で潮の色を見ながら、ポイントを決めていく。

「北東からの風に押されて、潟方向に流されていきます。潮の速さは0.3~0.4ノットくらいです」

塩田さんがジグを諦め、鯛ラバに工夫して攻めていく。

私は、ジグで海底付近を中心に攻めていく。

ベイトは小さいが、所々で立ち上がりが出てくる。

「来た。久し振りになんか来た」

上がってきたのは、アヤメカサゴ。

「カサゴは嬉しいですね」と久し振りの笑顔。

私のジグには、相変わらず反応が出ない。

ジグに魚が噛みついた後は沢山あるのだが、多分エソだろう。

少し、船が流れたところで、塩田さんにアタリ。

上がってきたのは、1キロ超の白甘鯛。

「おーっ、良かった!白甘鯛が来た。竿先を叩くから、てっきり真鯛と思っていた」と笑顔。

時折走り、時折竿先を叩く、真鯛独特のアタリにそっくりだった。

「良かったですね。動きの悪い潮ですからね。良かったです」

「下潮が変な動きに感じませんか?」

冒頭の会話になる。

「動きが悪い潮では、真鯛が来ないですかね」

「何とか、欲しいですね」

魚探のベイトの様子を見ながら、流すコースを変えていく。

「暫くは、沈み瀬が続きますから、このまま流します」

沈み瀬の駆け上がりに達したとき、塩田さんにアタリが来た。

重々しい走りが、伝わった来る。

「なかなか上がってきませんね」

ドラッグ音が鳴り、ラインが出ていく。

沈み瀬の際を、針掛かりした魚が走っているのだろうか。

「船で少し、追いかけますか」

エンジンスローでラインを回収する。

張り出した根か何か有るのか、魚が海底に張り付いた感じだ。

塩田さんが、一瞬ラインを緩めると獲物が走り出した。

「今です」

塩田さんが、一気にラインを巻き上げる。

上がってきたのは、オオモンハタ。

「あの走りと重さから、もうチョット大きなハタを想像していました」

と、すこし拍子抜けの感じ。

でも、見事な良型のオオモンハタだ。

「瀬の周りに根か何か有って、その周りを走ったのでしようかね」

魚が反対を向いて走るときは、その大きさ以上に魚の抵抗力を感じることがある。

動きの悪い潮の中で、結果を出す塩田さんの釣技は流石の物だ。

この後、もう少し粘りたかったが、北東の風とウネリもあって帰港した。

「真鯛は次ですね」

「青物も獲りたいですね」

次の釣行が楽しみだ。