開進丸
1月14日 風が出る前に
「風が出る前に、出来れば少しでもやりたい」
「朝早いうちなら、何とかなるでしょう」
都井岬灯台の天気予報では、早朝から北西の風9メートル以上になっている。
裸バエを過ぎる頃は、風は無いように感じていた。
しかし、水深50メートルのポイントに入ったときには、北西の風が既に吹き始めており、波も高くなり始めていた。
「すこし、揺れます。でも、ベイトはいますよ」
蔵屋さんが直ぐに竿を出して、釣り開始。
黒潮が可成り接岸していると、釣り仲間からの連絡を聞いていた。
潮の色は、青々として、良い感じだ。
海水に手を漬けると、ほのかな暖かみを感じる。
北西の風に押されて、0.8ノットくらいで北東方向にゆっくりと流れていく。
魚探には、途中途中でベイトの固まりが映し出されている。
そろそろ船を戻して、流すコースを変えようかと思ったときだった。
蔵屋さんの竿に、アタリが来た。
ラインが随分出ていたようで、なかなかラインの巻き上げに時間を要している。
時折、竿先が絞り込まれる。
「どんな感じですか」
「ただ、重いですね」
ゆっくりと巻き上げ、魚体が浮いてきた。
瞬間、鯛に見えたが「ニベだ」と直ぐに判明。
3キロ近く有りそうな、良型のニベだ。
「風と波で船が揺れる中、釣れてホッとしました」
蔵屋さんも、ホッとした様子だ。
続けて同じポイントを流したかったが、潟から強く吹いてくる北西の風で白波が立ち始めた。
時折、高い波も寄せ始めた。
「蔵屋さん、潟近くに移動しましょうか」
強くなる一方の北西の風を避けて、裸バエ近くに移動する。
此処も、直ぐに白波が立ち始めたので、又してもポイントを移動。
北西の風が強くなった時の、帰りの波を考えて、尻高前に移動する。
此処でもアタリはあるが、針外れ。
暫くすると、大島の東側全域で白波が立ち始めた。
「風が強くなってきましたね。帰りましょうか」
「初下ろしの竿とリールだったので、釣果があって良かったです」
帰りの会話の中でこの事を聞いて、私もホッとした。