開進丸
12月7日 西風の白波
水平線の雲間に、朝日が顔をのぞかせている。
水深80メートルの、ポイントを目指して走る。
「北西の風が強いですね」
風は北西、ウネリは北東から来ている。
風とウネリがぶつかって、三角波が立っている。
「波がバタバタ騒いで、釣りになりませんね。風を避けられるポイントに移動しましょう」
北方向に向けて、船を走らせる。
岸近くのポイントは、山が風を防いでくれる。
潮の流れは0.8ノット位だが、下潮は下りがやや速いようだ。
Sさんが早速竿を出す。
ジグに何かがバイトしてくるのだが、なかなか針掛かりしない。
「何かが触るっちゃけど、針に乗らん」
2流し目は鯛ラバに変更。
すると、何かがヒット。
アカヤガラだった。
「見た目と、このヌルヌルは嫌やけど、美味しい魚よね」
大切にクーラーへ。
3流し目はベイトの影が増えていることもあり、再びジグに変更。
すると「なんか来た」
上がってきたのは、丸々と太った見事な鯖。
「これがジグに、じゃれついて居るんだろうか」
次の当たりも直ぐに来た。
海中に見えたときは、小型の真鯛に見えたが、チダイだった。
「なんかイマイチ調子が出ませんね」
ポイントを変える。
東方向に走る。
沈み瀬が、並んでいるようなポイントだ。
魚探には、ベイトが映っている。
1流し目からアタリが来た。
上がってきたのは、良型のマアジ。
「これは良い鰺だ」と笑顔が出る。
ここから流すたびに、良型のマアジと鯖がヒットしてくる。
ガンゾウヒラメもヒットしてきた。
鰺は、二桁釣れただろうか。
釣れる鰺は、35センチ位の良型ばかり。
良型の鰺に、Sさんも笑顔が増える。
しかし、この頃から風が真西に変わり、風波が立ち始めた。
「西風も強く吹き始めると、釣りの邪魔しますよね」
「下潮が速いのと、風に押されるのとで仕掛けが出ますね」
「ポイントを変えましょう」
今度のポイントも、沈み瀬が多いポイントだ。
瀬周りのベイトを確認しながら、仕掛けを落としていく。
「早巻きしたらなんか来た」
走りの速い魚だ。
姿が見える頃になると、船底に入り強烈に走る。
「鰹か鯖かな」
上がってきたのは、ヨコワだった。
「おおっ、クロマグロの子供ですよ」
「良い魚が来た。どおりで走るはずよな」
予想外のヨコワに、Sさんも笑顔。
ヨコワがジグにヒットするようになると、一日が面白い釣りになると思うのだが…。
なかなか、そうはいかないのが釣りだ。
次のアタリが来た。
上がってきたのは、又してもアカヤガラ。
「今日はアカヤガラが多いですね」
美味しい魚だが、釣り味としてはイマイチかな。
この頃から益々西風が強くなり、船を走らせると、波飛沫が窓を叩くようになってきた。
「今日は帰りましょうか」
港に向かうときも、西風の飛沫を被りながら走った。
港の前には、大きな海上自衛隊の艦船が停泊していた。
なんか訓練かな?
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