五右ェ門
是ゴールデンウィークなり、釣場人山人海、夕方いと多く、故に深更に海辺へ行ふ。
現場に到るや、人影はほとんど少なく、釣座は我独りに領らるるがごとし。
但風勢恐ろしく、潮流著しく、釣難し。
乃ち風向を仰ぎ、線を率ゐて上方に投げ、リグを潮に順ひて自然に漂はす。
適ひて餌明暗の交はる境に入りし処に、竿先一度震ひ、小さきアタリ微かに伝はる。
鈎上りしアジは細かれど、数はすなわち群れ来たり、引く歓未だ極まりず。
逆境の中多策を試み、巧技遂に開け、魚群応声す。
是の夜の楽趣は凌駕し、満足して以て帰途に就く。






















