開進丸
1月20日ウネリの中で
北東の風が、強く吹いていた。
ウネリも、風に同調して、北東から寄せてくる。
波長は短く、波頭が立ち上がることがある。
「沖に出るのは、無理だな」
沖を諦め、浅場のポイントから入る事にした。
下り潮が、沖に払い出している。
潮をよく見ると、細かい汚れの物質みたいな物が、海面近くを漂っている。
ラインに着くと、汚れ玉になりそうな気がする。
釣りを開始して、Yさんにアタリが来た。
「巻き上げ時に、ヒットしてきました」
「小さいですね」
上がってきたのは、タチウオ。
最近、沖合のポイントで、タチウオが良くヒットしてくる。
港の中でも「夕方、ヒットしてきますよ」と、聞くことがある。
簑原さんにも、アタリが来た。
「良い感じで引きますね。重いです」
ゆっくりと、巻き上げていく。
海中に、白い魚影が見えてきた。
良型のニベが、上がってきた。
「8.5キロ有りますよ」
朝間詰めの一匹に、ホッとする。
ウネリが船縁に、打ち寄せてくる。
風と同調して居るのが、嫌な感じに成っている。
ポイントを、潟寄りに移動する。
Yさんに、大きなアタリが来た。
「瀬掛かりしたかな…」
重量感タップリに、沖に沖にと出ていく。
船で追いかけ、ゆっくりと巻き上げていく。
「見えた。鮫か…」
大きな、尾長鮫が上がってきた。
尾鰭に掛かっていた針を外して、海に帰す。
尾鰭でジグを叩くので、どうしても針掛かりが尾鰭になる。
ポイントを移動する中で、ベイト反応が浮いている処に出会わした。
「良い感じの柱状になっています」
「何かが付いているかも知れない。付いていて欲しい…けど」
そんな事を願っていると、簑原さんにアタリが来た。
竿先を小刻みに叩いている。
「ハガツオかな?」
期待を込めて、海中に目をやる。
「カンパチですね」
2キロ弱クラスの、カンパチが上がってきた。
「やった。付いていた」
気持ちに盛り上がりを感じる。
続けて、簑原さんにアタリが来た。
今度は、2キロ超のハガツオが、上がってきた。
海底から、浮き上がっているベイトには、これらの魚が付いている様だ。
Yさんにも、アタリが来た。
竿の曲がりが、綺麗な曲線を描いている。
上がってきたのは、2キロクラスのカンパチ。
北東からのウネリが高くなってきているだけに、このアタリは嬉しい。
魚探を見ていると、時間経過と共に、ベイト反応の出方が、変化している。
蛇行したり、中層に浮き上がったり、柱状になって固まったりしている。
そんな変化が見られる間に、アタリが来る。
カンパチとハガツオが、ヒットしてくる。
どちらも引きが強く、走りが楽しい魚。
竿が曲がり、ラインが引き出されると、やり取り中に笑顔が輝いてくる。
しかし、流しの回数が増えてくると、魚も見切ってくるのだろう。
アタリが、出なくなってくる。
「ポイントを変えましょう」
移動して、次のポイントを探す。
その一方で、北東の風が強くなり、ウネリも高く白波も大きくなってきた。
「これ以上は、無理かな」
簑原さん、Yさんと話して、切り上げることにした。