開進丸
12月7日動かない下潮
「下潮の調子は、どうですか」
「抜ける感覚が、有りますね」
「スカスカな感じですか」
「全然、潮の抵抗感を感じません」
朝イチに入った、ポイントの下潮の感想だ。
ベイト反応は、頗る良い感じで、映し出されている。
「何かがヒットするはず」
そんな期待感を持たせる反応が出ているにも関わらず、アタリが来ない。
真鯛かな…と、思わせるアタリが2度は来たが、針が抜けたり、外れたりと、不調な出足になった。
その後は、何処を探っても「下潮が動いていないですね」と、返事が返ってくる。
高妻さん、安永さん、上野さんと相談して、ポイントを大きく移動する。
「どうか下潮が、動いていますように」
祈るような気持ちになっている。
移動したポイントの、ベイト反応は少ない。
しかし、少しずつアタリが出る。
上野さんに鯖がヒット。
高妻さんには、ガンゾウヒラメが来た。
「こんな処でも、ガンゾウが居るの」と、笑いが起きる。
安永さんにも、ガンゾウヒラメがヒットしてきた。
安永さんには、真鯵もヒットしてきた。
どうにか全員にアタリが来た格好には成ったが、満足行く物ではない。
潮とベイトを求めて、移動を繰り返す。
移動を繰り返している間に、少しずつ潮に動きが出てきた。
「下潮に抵抗を感じます」
良い傾向になってきたと、判断する。
すると、上野さんに強いアタリが来た。
「どうですか」
「重いですけど、走りませんね」
やがて、海中にハタの姿が見えてきた。
釣り上げた瞬間は、ハタの名前が出てこなかった。
辞書で調べたら「ホウキハタ」と判明。
☆五つの美味なハタだと書いてある。
安永さんにも、強いアタリが来た。
ドラグ調整を緩めにしてあるリールから、ラインが引き出される。
「何だろう」
姿を見せたのは、大きなイトヒキアジだった。
「正体は、こいつか」
イトヒキアジは、引きが強い。
下り潮が少しずつ速くなっている分、潮の抵抗も加わって巻き上げるのに時間を要した。
くだり潮の流れが、1ノットを超すように成ってきた。
船首で、上野さんがアタリを捕らえた。
ラインが横に走っている。
「カツオですかね」
「違うような感じがします」
上がってきたのは、サワラに近いサゴシ。
「上の方で、当たってきました」
少しずつ、潮が良くなっているのだろうか。
上野さんに、続けてアタリが来る。
竿先が、真下に突っ込んでいる。
「カンパチかな…」
姿を見せたのは、ロウニンアジ。
力の強い、引き味が楽しい魚だ。
この大きさは、群れているはず。
同じコースを流していく。
同じようなところで、次のアタリが来た。
これも、力強い引きが竿先を絞っている。
「ロウニンアジですか」
「多分、そうだと思います」
良型のロウニンアジが、上がってきた。
潮が動いてくれば、何らかのアタリは出てくる。
前半の不調から、下潮が動きだした後半に上がった釣果。
諦めずに、頑張って頂いた結果が、嬉しかった。