開進丸
6月14日冷たい潮
「潮が冷たいですね」
船を流している時に、横山さんが言われていた言葉。
「動かないですね」
60グラムの軽い仕掛けでも、真下に落ちていく。
金丸さんが、仕掛けを変えながら、言われていた言葉。
潮色も、青い色から、黄緑色の下り潮に変わりつつある。
今日も「朝間詰め勝負」になっている。
「午前10時頃には、南西の風が強まるみたいですね」
昨日と同様、風を気にしながらの釣りになる。
早朝の海は、そんなにウネリが高いとは思わなかった。
しかし、釣り開始から動きが割るい潮に、なかなかアタリが出ない。
大量にいる鯖子は、一投毎に食いついてくる。
一瞬だが、潮が動いた時間があった。
潮行きが0.2ノット前後で流れていたが、この時は0.7ノット前後に成っていた。
金丸さんに、アタリが来た。
明らかに、鯖子とは違うアタリ。
何度も、突っ込みを見せる。
やがて見えてきたのは、良型のイサキ。
長さを測ると、43センチあった。
「嬉しいですね」と、金丸さんの笑顔が良い。
横山さんにも、強いアタリが来た。
「青物の様ですね」
慌てる事無く、ゆっくりとやり取りを進める。
しかし、獲物が突っ込みを見せた時、竿先が元に戻った。
「枝針が切られましたね」
鯖子が食い付いて、それに青物がヒットしたようだ。
逃げられて、くやしい…。
この一瞬が過ぎると、再び、潮の動きが緩慢になってきた。
下潮の水温も、下がっている様子。
南よりの風も、少しずつ勢いを増してきた。
南東からのウネリに、白波が立ち始めている。
潮の動きが悪い中にも、ポツポツと何かのアタリが来る。
竿先に、何かがバイトする反応が出てくるが、針掛かりしない。
金丸さんにヒットしてきたのが、大きな鯖と真鯵。
横山さんにヒットしてきたのが、オオモンハタ
オオモンハタは、空気抜きをして海に帰す。
「もっと大きくなって、帰ってきてね」と、声を掛ける。
横山さんに、重量感のある強いアタリが来た。
「これは、イサキかも知れませんね」
「期待したいですね」
針掛かりが浅いといけないので、ゆっくりと巻き上げていく。
海中に、赤い魚が見える。
「オジサンだ…」
上がってきたのは、大きなオジサンだった。
「イサキかも」と、期待していただけに残念だ。
この頃になると、天気予報どおり、南西の風が強くなってきた。
ウネリも幅が狭い状態で、寄せてくる。
「波頭に白波が立ち始めたら、残念ですが引き上げましょう」と、事前に横山さん、金丸さんに説明。
余り時間をおかずに、その状態になってきた。
午前10次過ぎに、引き上げを決定した。