開進丸
6月5日イサキが来た
気持ちの良い、凪の海だった。
風も西風が気持ちよく、午後からの南東の風も優しかった。
朝間詰めは、大きなイルカに悩まされた。
何かを追い掛けて、ジャンプ。
私の船の両側を、悠々と泳いでいく。
その間は、ベイト反応が、綺麗に消えていた。
イルカの姿が見えなくなって、釣りを再開。
金丸さんと共に、ベイト反応を探す。
金丸さんとは、20数年来の釣り仲間。
どんな釣りをするかは、分かっている。
「何処かに、ベイト反応がないだろうか」
小さいベイト反応が出てくれば、そのポイントから竿を出していく。
潮行きは、上り潮が緩く北東に流れている。
上り潮が、0.7ノット前後で流れ始めた時に、アタリが来た。
「何か来た」
金丸さんにアタリが来た。
「良い感じで引いているかな」
ゆっくりと巻き上げていく。
上がってきたのは、良型のイサキ。
「狙いどおりのイサキが来たね」
最近は、イサキのアタリが出ていなかっただけに、嬉しい1枚だ。
上り潮が流れ始めると、ベイト反応が少しずつ増えてきた。
大きな鯖も、ヒットし始めた。
片手では、指が回らない位の太った鯖だ。
ダブルヒットしてくると、結構な引きが楽しめる。
大きな鯖とは違う、引きが来た。
「鯵だったら、嬉しいな」
海中に目をやると、獲物が見えてきた。
「イサキのダブル掛けだよ」
良型のイサキが、ダブルで上がってきた。
「よっしゃ、チャンス到来」
そう思った時に、金丸さんに大きなアタリが来た。
「根魚かな…」
獲物が底走りして、なかなか浮いてこない。
その内、沖に向かって走り出した。
グイグイと力強く、疲れを知らない走りを見せている。
「サメかな…。もしかしたら、尾長サメかもね」
ゆっくりと巻き上げていくと、その姿が見えてきた。
「やっぱりサメだ」
目玉がクリクリしている尾長サメ。
尾鰭で、小魚を叩くだけに、必ず尾鰭に針掛かりしている。
針を外して、海に帰す。
気持ちを切り替えて、イサキ狙いに戻る。
しかし、サメと遊んでいる間に、潮が変わっていた。
潮の動きが、止まっていた。
「流れが、0.2ノット前後になっている」
「どうしたもんかな…」
沖に目をやると、潮目が確認できる。
その潮目に船を進めるが、海面に潮の汚れが沢山浮遊している。
ラインに、クラゲの一部みたいな物が、付着する。
浮遊する汚れは気になるが、海底付近にベイト反応が出始めた。
直ぐに、金丸さんが仕掛けを入れていく。
ベイト反応の中に入れば、アタリが来る。
「鯵みたいやね」
ゆっくりと、巻き上げる。
良型の真鯵が、ヒットし始めた。
潮自体も、上り潮が徐々に、速く流れ始めた。
「今の速さは、0.9ノット前後だよ」
金丸さんの竿に、鯵のアタリが連発して来る。
大きいのは、40センチを超している。
「これだけの大きさなら、嬉しいよね」
時にダブルで、ヒットしてくる。
「二桁釣れると嬉しいね」
と、金丸さんが言っていた通り、数が上がっていく。
しかし、上り潮が1ノットを超して流れ始めると、アタリが出なくなってきた。
「上は流れていても、下が流れていない気がする」
金丸さんに予測が、当たっているようだ。
ポイントを変えてみるが、アタリが出なくなってきた。
「やっぱり、釣りは潮が全てかな…」
締めの一枚は上げられなかったが、期待したイサキ、鯵は良型だった。