10月30日嬉しさと悔しさと
港を出る時、何時も思うことがある。

「何とかして、お客様の自己新記録が釣れないかな」

この願いは、そう簡単に叶えられる物でも無い事は、分かっている。

でも、今日はその願いが叶った。

ガッチリと交わす祝福の握手も、つい、力が入った。

昨日からの流れで、何処でアタリが出たかを思い直して、ポイントに入った。

潮の色は、青々とした良い感じ。

魚探に出てくるベイト反応も、海底から浮き上がって、ベイトボール状になっている。

しかし、連続してベイト反応が出ているわけではない。

原さんは、大物仕掛けをセットして、アラ狙い。

温水さんも、ジギングで青物を狙っている。

朝の内は、北西の風に押されるように、船が南東方向に流れていく。

その速さは、0.7ノット前後と、釣りやすい速さになっている。

温水さんに、アタリが来た。

ヒットした瞬間から、ドラッグ音が鳴り、ラインがどんどん引き出される。

何とかして、走りを止めたい。

温水さんとしては「鮫かな…」と、一寸不安な気持ちにも成る。

ラインが、船から離れるように沖に出ていく。

「鮫じゃ無いですよ」

温水さんの横で原さんがタモを用意して、獲物が浮いてくるのを待っている。

「浮いた。ブリですよ」

無事に、その大物はタモに収まった。

103センチ、10.1キロの丸々と太ったブリだ。

「温水さん、メーター越えですよ」

メジャーで測定して、直ぐに知らせる。

「やった!。メーター越えは初めてや」

歓喜の声に、ガッチリと祝福の握手を交わす。

これで一気に船内は、盛り上がる。

このブリを祝福するかのように、下潮にも変化が出てきた様子。

大きなベイト反応が、繋がりを持って出てくるようになった。

そのベイトの正体は、30~40センチ前後の真鰺。

原さんの、仕掛けに鰺がヒットしてくる。

深場では、レンコダイがヒットしてきた。

時折ヒットする鯖も、丸々と太っている。

その鯖や、真鰺を餌にして、大物アラを狙う。

この鰺が餌になる。

魚探でベイト反応を探して、その真上を通るように船を流す。

「瀬掛かりしました」

温水さんが、瀬掛かりを外そうとしている。

「外れました」

巻き上げてみると、真鰺が付いている。

その真鰺を見ると、何かの歯形が付いて、所々皮がはげている。

何かが食いついていたようだ。

「瀬掛かりじゃ無かったようですね…」と、温水さんの残念そうな表情。

原さんの、大物仕掛けにも何かが来ている。

餌の鯖が頭だけ上がってきた時と、明らかにアタリが違う。

餌を、35センチくらいの真鰺に変えたときだった。

餌の真鰺が「暴れた」と、思った直ぐ後。

竿先が、突っ込んだ。

原さんが、全身で引き上げに掛かる。

竿先がゴンゴンと、何かが掛かっていることを知らせている。

その挽きに耐えていると、「あっ…」

針が抜けてしまった。

「アラだったと思います」と、悔しそうだ。

真鰺のアタリは、続いている。

ダブル、トリプルでヒットしてくる。

この鰺を餌にして、大物にトライするが、その後のアタリが来なくなった。

嬉しさと悔しさが、同居した一日だった。

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