開進丸
１０月１日風に負けた
沖合に出てみると、北東の風が吹いていた。
朝間詰めの一番良い時間に、風が強くなっている。
風に押されて、白波も立っていた。
「釣りを続けるには、厳しい状況かな…」
青物狙いで竿を出してみたが、潮の流れも速かった。
風の影響も有るのだろうが、下り潮が１．７ノット前後で南西に流れている。
ラインが、どんどん出ていく。
風波によって、船も時折大きく揺れる。
ここは、早めの安全対策をすることにした。
「波静かな、内場に入りましょうか」
金丸さん、菅さんに声掛けして、移動する。
金丸さん達も、波とウネリが気になっていたようで、ホッとした様子が伺える。
ベイト反応を探して、釣りを再開する。
青物がヒットする確率は減っていくが、真鯛は期待がもてる。
一流し目に、菅さんにアタリが来た。
竿先を小刻みに叩きながら、姿を見せたのはチダイ。
内場の常連魚だ。
菅さんにチダイがヒットしたことで、私も少しだけホッとした気持ちになる。
流すコースを、少しずつ変えていく。
又しても、菅さんにアタリが来た。
竿先を叩くような、真鯛独特のアタリだ。
「真鯛みたいですね」
菅さんも、竿先のアタリから、獲物が分かっている様子。
食べ頃サイズの真鯛が上がってきた。
ポツポツだが、アタリが続く。
金丸さんに、強いアタリが来た。
「海底付近に、ベイトの固まりがあります」
声かけした時と、ほぼ同時にアタリが来た。
ラインが、どんどん引き出されていく。
竿先が、海面に突っ込む様なアタリだ。
突然、竿先が大きく跳ねた。
「あっ…、外れた…」
多分、大きな真鯛だったと思うのだが…、悔しいけれど逃げられた…。
こんな悔しさは、後に残る。
「上げていたら…」
悔しい思いを胸に、竿を出している金丸さんにアタリが来た。
良型のイトヨリダイが、上がってきた。
菅さんにも、何かのバイトが有るのだが、なかなか針掛かりしない。
潮が変わりつつあるのか、船が流される方向が北西方向に変わってきた。
海中の様子も少しずつ変わって、ベイト反応が多く出始めた。
魚探を注意深く見ていると、金丸さんの竿がいきなり引ったくられる様なアタリが来た。
走り出した獲物が、なかなか止まらない。
ドラッグを微調整しながら、相手の走りが止まるのを待つ。
「止まりました。何とか、巻けます」
少しずつ、ラインを巻き上げていく。
海中に、綺麗なピンク色が見えてきた。
１．６キロの、綺麗な雌の真鯛が、上がってきた。
「いきなりのアタリに、ビックリしました」
真鯛を手にする、金丸さんの笑顔が良い。
後輩の菅さんも、笑顔で祝福している。
職場の先輩後輩の、楽しい一日になった。
