開進丸
5月8日残っていたチャンス
計画する度に時化たり、風が強かったりと、天候に振り回されていた。
満を持して、今日の釣りに出ることが出来た。
「鍋島さん、釣れると良いですね」
「連休明けの、チャンスが残っていませんかね」
期待と不安を胸に、ポイントを目指した。
昨日の時化の影響が、まだ少し残っていた。
南東から波長の長いウネリが入り、北東の風が吹いている。
潮も下り潮が流れて、下潮は上り潮の二枚潮の様子を呈していた。
0.8ノット前後で流れる下り潮。
「下潮が、軽く感じますね」
「でも、中層にはジグに絡みつく感じがありますね」
潮を探りながら、獲物を求める。
ポツポツとバイトはあるが、針外れになっていた。
2流し目に入り、ホール中にアタリが来た。
「来た!来ました」
竿が大きく撓る。
獲物は真下に突っ込み、一気に20メートル以上走り出した。
何とか走りを止めると、船の反対側に回り始めた。
獲物に付いていく。
船首に出て、浮かしに掛かる。
獲物の姿が見えてきた。
「ブリです」
大きなブリが上がってきた。
101センチ、8.6キロの丸々としたブリだ。
「連休明けのチャンスが、残っていましたね」
鍋島さんの笑顔が輝いている。
ガッチリと、祝福の握手を交わす。
ポイントを少しずつ移動していく。
バイトはあるが、針掛かりしないモノもある。
「何か来ました」
良型の、アヤメカサゴが上がってきた。
沈み瀬周りに行くと、イサキもヒットしてきた。
1キロを超す、良型のイサキだ。
「イサキの季節になりましたね」
釣りの種類が、増える季節になってきた。
魚探にベイト反応が無くなってきた。
移動しようとした時に、アタリが来た。
真鯛のようなアタリを、見せている。
「真鯛では無い気がします」
上がってきたのは、3キロクラスのニベだった。
「真鯛と期待したけど、ニベでしたね」
思わず、笑いが出てきた。
その後も、良型の真鰺やウッカリカサゴ等が、ポツポツとヒットしてくる。
潮も干潮に向けて、段々と下がってきた。
船から見える磯場も、可成り潮が引いている。
「来た!」
鍋島さんに、強いアタリが来た。
「どんな感じですか」
「多分、ブリですね」
ドラッグ音が鳴る。
楽しそうな、やり取りが繰り広げられる。
ブリの姿が見えてきた。
88センチ、6.1キロの良型のブリだ。
「2匹目ですね」
祝福の握手を交わす。
午後の干潮を過ぎて、満潮の潮が動き出した。
ポイントを移動して、次の獲物を目指してトライする。
干潮の時は、ベイト反応がなかった。
しかし、満潮の潮が動き出すと、ベイト反応が出てきた。
「良い反応がありますよ」
狙い通りと言っても良いくらいの、ベストなタイミングでアタリが来た。
今度のアタリは、竿先を叩く。
「今度は、真鯛でしょう」
「多分そうだと思います」
時折、ドラッグ音を鳴らしながら、浮かしに掛かる。
真鯛の姿が、見えてきた。
64センチ、3.1キロの太った真鯛が上がってきた。
「美味しい魚が、揃いましたね」
「ブリに真鯛、イサキに真鰺、カサゴと嬉しいです」
「連休明けのチャンスが残っていましたね」
「残っていましたね。嬉しいです」
鍋島さんの、笑顔が輝いた一日だった。