開進丸
12月17日風にも負けず出てみたが…
青く綺麗な潮が、港の中まで入ってきていた。
「良い色してますね」
岩さん(通称)と、綺麗な潮を眺めながら沖に出てみた。
「以外に凪ですね」
「行くだけ、行ってみますか」
狙いのポイントに船を走らせる。
この時間(午前11時過ぎ)は、北西の風が吹いているが、さほど強くは感じない。
「ベイトは良い感じですよ」
海底から20メートル近くベイト柱が立っている。
「潮は、沖に払い出しの上り潮0.8ノットです」
岩さんが直ぐにジグを落として、釣り開始。
今にもアタリが来そうな、ベイト反応だが…。
「下潮が軽い気がする」と、岩さん。
「上は良い感じでも、下がイマイチかな」と、どう攻めるか思案する。
ところが、北西の風が強くなり始めて、潟からの白波が高いウネリになり始めた。
「凄い風ですね」
「浅場に移動しましょう」
少しでも、風の当たらないと思われる処へ移動する。
「ここなら、何とか風は凌げますね」
浅場に来て、ジグから鯛ラバに切り替える。
此が、功を奏する。
強くなった北西の風に押されるのは、覚悟の上の釣り再開。
「流れが1ノットを超していますよ」
魚探を覗いて居たときに「来た」と、岩さんの声がした。
「竿先を叩いていますね」
「真鯛だと良いですね」
上がってきたのは、1キロクラスのオオモンハタ。
「良い感じですね」と、ホッとした笑顔になる。
2流し目に入る。
少しずつ、ラインが出ていく。
「だいぶ、ラインが出てますね」と、話していた時、ラインが走った。
ドラッグ音が鳴り、ラインが出ていく。
「止まらん。止まらんど」
と、凄い走りを見せているが、何とか走りを止めて引き寄せ始めたところで、針が外れた。
「くそっ!何んやったろか」
沖に出ると、風の強さが増してくる。
船を戻して、3流し目に入る。
「来た!おおっ、今度も走るし重いど!」
風や潮の流れ等の抵抗が凄くて、なかなか上がってこない。
「ラインも相当出ていますよ」
「ラインが出過ぎて、口切れする心配があります」
「船で行きましょう」
船で獲物を迎えに行くようにする。
ゆっくり走りながら、ラインを巻き上げていく。
「浮いた!」
船の前方に、茶色い魚が浮き上がってきた。
2キロクラスのオオモンハタが、浮いていた。
タモですくい上げると「下の鯛ラバが無い」
リーダーが延びて、縮れたようになって切れている。
「もしかして、もう一匹掛かっていたかもですね」
「ダブルヒットだったかも…」
北西から真北に変わった風の強さで、上手く判断できなかったようだ。
「くそっ、残念…」
益々強くなってきた北風に、潮は上っているけど船は下っていく状態。
「諦めて、帰りましょうか」
「そうですね。仕方ないですね」
切られた悔しさが、岩さんの表情に滲み出ている。
「次…やな」
風にも負けずに出てみたけれど…又しても、負けたな…。