開進丸
11月4日渋い、渋い、渋い
天気予報通り、風は西風が吹いている。
波もない状況。
だけど、南からのウネリは定期的にファーと、寄せてくる。
「風が変わる前に勝負したいね」
従兄弟の信司が、青物狙いで竿を出す。
時折、パラパラと来る雨。
インターネットで天気予報を見ると、大きな雨雲は見られない。
潮は、下りの吐き出しに成っている。
ベイト反応も、まずまずと言った具合で、海底から浮き上がっている。
ジグをしゃくっている信司が「おっ」とか「あっ」とか、騒いでいる。
「当たった?」
「アタルっちゃけど、ドンとワントライするだけで、後追いがない」
青物らしいアタリが有るようだ。
「普段なら、後追いして来るけどね」
竿先を見ていると、確かにバイトがあると竿先が一瞬突っ込む。
「乗ってこんね」
「ダメやな」
エソなどの外道は、しっかり針掛かりしてくるのだが…。
「ちょっと場所を変えてみようか」
船を走らせて、海底の窪みがあるところに入る。
「ベイトは海底から立ち上がっているよ」
スロージグにしたり、ワンピッチに切り替えたりして信司が頑張っている。
「来た!」
青物だろうか、竿が良い曲がり具合を見せている。
相手が突っ込んだ。
竿を溜めて、堪えているが…。
「あっ…切れた…」
PEラインが切れている。
「あー……、なんやったろうかね…」
「多分、青物だと思いますけど…」
口惜しいけど、切れたモノは性がない。
「次頑張ろう」
再度、ポイントを移動する。
「満ち潮が入り出したから、アタリが出るかもよ」
「ベイトは居ますか」
「海底から、浮き上がっているよ。10メートルくらい上」
ベイト反応が出ている処をシャクリ続ける。
「来ました」
信司にアタリが来た。
「ゆっくりやれよ」
時折見せる突っ込みを楽しんでいる。
「見えました。カンパチです」
2キロ弱のカンパチが上がってきた。
「今日は渋いアタリばかりやったから、ホッとしたね」
「さっきは切られたし、ボーズで無くて良かった」
信司もホッとした表情している。
しかし、苦戦しているときは何処までも苦戦が続くようだ。
風が南西に変わり始めた。
しかも、潟が見えないくらいの雨が降り出した。
土砂降りに近い雨だ。
「信司、帰ろうか」
「そうですね。帰りますか」
GPSを頼りに、船を走らせる。
「渋くて、渋くて何で後追いせんかったね」
バイトしてくるのだが、針掛かりしない状況の話を反省材料にしながら、雨の中帰港した。