開進丸
11月26日時化出す前に
「今日は、出られないと思っていました」
「悩んだところですが、午前中はやれると思いました」
「ウネリが出ますかね」
「多分、午後は時化て来るかも知れませんが、時化出す前に頑張りましょう」
竹本さんと、不安半分の気持ちながらも、ポイント目指して船を出した。
朝の内は、海も以外と凪いでいる。
風も、弱いながらも北西が吹いている。
ポイントに入ると、先客の船が居る。
その船の邪魔にならないように、離れたところのポイントに入る。
潮は下り潮だが、潮色は青みがあって良い感じだ。
ベイト反応も、途中にベイト柱があって、良さそうに感じた。
「流してみましょう」
竹本さんが、ジグを落としていく。
良い感じで、ラインが出ていく。
潮の流れは0.5ノット前後と、やや緩く感じる。
ベイト柱の有るところを流してみるが、アタリが出てこない。
今日の狙いは、今が時期の青物。
「鰤が欲しいですね」
と、頑張ってジグをしゃくるが、反応がない。
場所によっては、海底から20メートル位はベイト柱が立ち上がっているのだが…。
ヒットしてきたのは、エソだけと寂しい状況。
「場所を変えましょう」
沈み瀬の、斜面になった処を攻められる場所に、移動する。
「浮き上がった、ベイト反応がありますよ」
魚探で、ベイト反応が蛇行している様子を見ていた。
「来た!来ました!」
移動して、風が北東に変わってきただけに、早くアタリが欲しかった。
「小さい気がするけど、何だろう」
竿先が小刻みに震えている。
「鯖かな」
最初は、そんな軽いアタリに感じていた。
海面近くまで、上がってきたところで抵抗が始まった。
急に右に、左に、真下にと走り回る。
「ハガツオです」
大きなハガツオが上がってきた。
3キロクラスの大きさだ。
船に上げると、バタバタ暴れて血が飛んでくる。
海水で洗って、急いで血抜きしてバケツに入れる。
「何とか、ボーズは無くなりました」
竹本さんが、良い笑顔になっている。
もう一枚、欲しいところだ。
二流し目に入り、斜面になるところを流していく。
「乗った!」
ベイト反応が浮き上がっているところで、アタリが来た。
直感的に「此は大きい!」と、竹本さん。
ドラッグ音が鳴り、ラインが引き出される。
大きな瀬の周りを、走っている感じがする。
「頑張って!」
ラインが沖に出ながら、獲物が海面近くを急激な走りを見せてきた。
ラインの出具合を調節する。
すると、獲物の走りが一段と、強烈になった。
「おあっ…」
竿先から、獲物の反応が消えた。
ラインとリーダーの結び目アタリ出来られている。
「あー…口惜しい…」
もう少しで捕れたかも知れないだけに、私も口惜しい。
獲物とのやり取りに気を取られていたが、気が付くと北東の風が強くなっていた。
ウネリも段々と高くなってきた。
「口惜しい!」気持ちは、大いにある。
しかし、帰りましょうか。
予報通り、午後からは風が強まり、ウネリが出てきた。
「口惜しい」思いを残して、帰港した。