開進丸
11月10日船酔いしそう…
夜明け前にポイントに入った。
それまでの行程は、ウネリの小高い山を乗り越え、乗り越えやってきた。
「こんな早くから、北東の風が吹いているとは思わなかった」
連絡した仲間も、同じ事を言っていた。
ウネリの高さは、2メートルは有りそうだ。
「船酔いしそうな、ウネリと波ですね」
ポイントの海域では、北東の風に向かって上り潮が流れていた。
それに、沖合から潮目が入って来て、三角波の中にいる状態になっていた。
「このまま、此処で釣りを続けるのは、危ない気がします」と、塩田さん。
私も同じ感想を持っていたので「移動しましょう」と、判断する。
仲間も船にも連絡して、浅場の方に移動する。
移動しながらも、魚探を見ていると、所々でベイト反応が出てくる。
比較的、波の大人しく感じるところで「竿を出してみますか」と、聞いてみた。
「やってみます」と、塩田さん。
浅場とは言え、海底は良い感じの起伏があり、その起伏に中にベイト反応が出てくる。
「何か来ました」
竿先を叩くアタリではないが、重みのある引きを見せている。
「真鯛では無さそうですね」
やがて姿を見せたのは、スギだった。
「珍しい魚が釣れましたね」
図鑑には、美味しい魚として、紹介されている。
ウネリが高く、主なポイントに入れない中での“スギ”の釣果。
まずは、一安心と言ったところだろうか。
一安心したところに、仲間の船が近づいてきた。
「鰺子有りますよ」
「下さい!」
船仲間の富田さんが、生き餌用の鰺子を釣って持ってきてくれた。
「塩田さんに、プレゼントしますね」
笑顔の富田さんの、嬉しいお言葉に感謝。
「お礼にリポビタンをどうぞ」
生け簀の中に、活きの良い鰺子が手に入った。
その鰺子を餌にして、落としていく。
「何か当たっている気がします」
直ぐに反応が出た。
巻き上げると、コウイカが付いてきた。
タモで掬って、バケツの中へ。
先日のコウイカに船内に墨を吐かれて、往生した事を思い出した。
「姿はイマイチだけど、美味しいイカが手に入りました」と、笑顔の塩田さん。
「塩田さん、少しだけ波も落ちた気がします。出てみますか」
「行きます」
直ぐに、最初に予定したポイントではないが、カンパチが狙えるポイントに船を走らせる。
ポイントに向かう間の波の状態は、可成り落ち着き始めてきたように感じる。
直ぐに竿を出す。
塩田さんのジグに、アタリが来た。
「来た、来ましたよ。カンパチです」
塩田さんの、楽しそうなやり取りが始まる。
獲物も、強烈な突っ込みを見せてくれる。
2キロ弱のカンパチが、上がってきた。
ここから、暫くはカンパチが連続でヒットしてきた。
鰺子の生き餌にも、ヒットしてきた。
ベイト反応に中に押していく、ジグにもアタリが来た。
2キロ前後の、カンパチの引きは楽しい。
しかし、アタリが出始めて喜んでいたら、潮が変わった。
「あれ…、潮が緑掛かって来ましたね」
「下りが入ってきましたね」
ジグを触ると「こりゃ…冷たい…」
下潮も水温が下がってきたのだろうか。
アタリが出なくなってきた。
「用事もありますし、今日はここで納竿にしますか」
「そうですね。帰りましょう」
港に向かって、船を走らせた。