7月24日帰国の前に
マイケルさんが、カナダに帰国する日が近づいてきた。

「いつ帰るのですか」

「30日に帰ります」

日南の海を楽しんで、楽しい思い出を持って帰って欲しい物だ。

「フグを覚悟で、アタリの多い処に行きましょう」

早朝に瀬周りでイサキを狙って欲しい。

狙い通り、釣り始めて直ぐにアタリが来たが、掛かりが浅く外れてしまった。

「大丈夫ですよ。又来ますよ」

声かけして、直後にフグに仕掛けを切られた。

早くも、フグのお出ましだ。

ポイントを移動すると、沖から潮目が入ってきた。

流れも速くなって、2ノットを超すようになってきた。

そんな中で、粘っていたマイケルさんにアタリが来た。

「何か来ました」

思わず「フィッシュオン!」と、声かけすると「フィッシュオン!」とマイケルさんの笑顔が返ってきた。

金丸(旭先生)さんも、嬉しそうだ。

上がってきたのは、良型の白甘鯛。

「やりましたね!」と、祝福の握手。

「なんて言う魚ですか」と、日本語で質問が来た。

「白甘鯛と言う、高級魚ですよ」

「高級魚?」と、聞き返された。

なんて答えたら良いだろうか。

思わず「甘鯛ナンバーワンフィッシュ」と、訳の分からない日南弁英語?で答えた。

「ナンバーワンフィッシュ!」と、笑顔が返ってきてホッとした。

片言日南弁英語と、身振り手振りで会話を楽しむ。

旭先生にもアタリが来た。

「シブダイの子供のような、フエダイの仲間でしょうね」

「珍しい魚ですかね」

と首を傾げる。

潮が速い間は、フグの襲来は収まっている。

鯖か鰹かのアタリが時折あるのだが、針はずれで逃がしてしまう。

やがて、上り潮の流れが落ち着いてくると、徐々にフグが出て来だした。

鯛ラバの仕掛けを、切られるようになってきた。

切られては仕掛けを作り直す。

そんな中で、マイケルさんにアタリが来た。

竿先を叩く、鯛独特のアタリ。

上がってきたのは、良型のチダイだ。

マイケルさんの、フグに負けない粘り勝ち。

旭先生にもアタリが来た。

こちらも竿先を叩く鯛のアタリだ。

「ゆっくり上げてくださいね」

上がってきたのは、綺麗にピンク色の真鯛。

「旭先生、久し振りの真鯛ですね」

「じゃーな、久し振りやな」

「フグにはやられますけど、良い釣りになりましたね」

「嬉しいですね」

マイケルさんの帰国前に、自分たちで釣り上げた真鯛で、楽しい食事会になるだろう。

「これが切られたら、今日の釣りはお終いにするかな」

そう言って、落としたマイケルさんの仕掛けが瀬に掛かった。

船を回して仕掛けを外していると、瀬掛かりが取れた仕掛けに何かが飛びついた。

マイケルさんが持つと小さく見えるオオモンハタだった。

「締めは、オオモンハタですね」

「初日の釣り始めもオオモンハタやったし、締めもオオモンハタやね」

旭先生、マイケルさんと私の3人で大笑い。

名残は惜しいが、日南の釣りを楽しんでもらった気がする。

船着き場に帰ってきた。

「マイケルさん、ありがとう」

「楽しかったです」と、笑顔が嬉しい。

日南弁英語で「プロミス、シーユーアゲイン」と握手を求めた。

マイケルさんも「オーイエス」と、返して頂いた。