開進丸
5月16日動かない潮に南西の風
釣り始めの朝間詰めは、西風が良い感じで吹いていた。
「今の内にすこしでも、釣果を上げたいね」
「午後からは南東の風に変わるんでしょう」
「南が入ると嫌だよね」
同じ所は二度流さない。
潮上方向に、流すコースをずらしながら、仕掛けを入れていく。
潮は、緩い上り潮に見えるが「多分、下り潮の反転流だと思います」と感じている。
朝間詰めの潮の速さは、0.8ノット前後。
「丁度良い感じの流れになっていますよ」
横田さん(愛称 徹君)と長代さんにほぼ同時にアタリが来た。
「多分鰺だと思います」
30センチクラスの良型の真鰺が上がってきた。
「良い型ですね」
まずまずの出足に、少しホッとする。
この後、カサゴやエソがヒットして、本命の真鯛のアタリに届かない。
針外れの出て「多分、イサキか鰺かな…」と、チョット苦戦の模様を呈し始めた。
しかし、その状況を打破していただいたのが長代さん。
「何か来ました。真鯛だともいます」
慎重にラインを巻き上げていく。
1キロクラスの、良型の真鯛が上がってきた。
次の流しで、徹君にアタリ。
「良い型の真鯛だと思います」
時折、ドラッグ音がなり、ラインが引き出される。
「ゆっくり上げていきます」
63センチ、2.7キロの真鯛が上がってきた。
お二人に真鯛が来て、安心感が広がる。
でも、一方で不安も的中した。
潮が動かなくなってきた。
「0.3ノット前後です」
この悪状況の中に、イルカの大群が船の周りで遊び始めた。
沖合にも、潟方向にもイルカがジャンプして遊んでいる。
暫くは、イルカ見学クルーズになってしまった。
姿が見えなくなったところで、ポイントを移動する。
2時間近くアタリが無い状態の中、徹君にアタリが来た。
レンコダイが上がってきた。
潮が動いていそうな所を探して、チョイ深場に移動してきたがベイトはいても、アタリに繋がらない。
その内に、風が南東に変わり、徐々に波も出てきた。
再度、ポイントを移動する。
「昨日、イワシのナブラが立っていたところに行ってみましょう」
そのポイントには、沢山のカツオドリが舞っていた。
魚探には、海底から20メートルくらいの高さまで、ベイト反応が出ている。
「此処のベイトは凄いですね」
長代さんにアタリが来た。
キロ近い真鯛が上がってきた。
徹君には、真鰺がヒットしてきた。
「ベイトの正体は、この真鰺ですかね」
そんな話をしていると、長代さんに大アタリが来た。
竿が海面に向かって、大きく曲がっている。
「ラインが止まりません」
船で追いかける体制を取ったとき、リールに巻いていたPE1.5号300メートルが全部引き出されて切れた。
「最初のアタリは、瀬掛かりかと思った」
とんでも無い「大物」も、このベイトの中に寄ってきていたのだろう。
南東から南西に変わった風で波が高くなってきた。
口惜しい思いは残ったが、帰港することにした。