4月29日 静かな夜明けと南東の風

久し振りに、水平線から上がる太陽を「綺麗だな」と、思い眺めた。

今日は、風が変わらないようにお願いしたが、果たしてどうだろう。

朝間詰めのチャンスタイムを逃がしたくない気持ちで、船を走らせる。

休日で、海が穏やかと来れば、釣りを楽しむ船も多くなる。

入ったポイントには、漁船の他にもう1隻のボートが来ていた。

横田さん(愛称 徹君)とMさんが竿を出していく。

潮は、下り潮が沖に払い出している。

流れは「ほぼ止まっている」と感じるくらいの速さだ。

数字の表示は、0.4ノット前後。

徹君にアタリが出るが、強い突っ込みで針が外れてしまう。

「今のは、勿体ない」と、しきりに悔しがる。

「また、来るよ。頑張ろう」と、声かけした。

少しでも潮が流れているところを探して、ポイントを移動する。

「ここは、下潮が利いていますね」と、Mさんと徹君。

すると、直ぐにMさんにアタリが来た。

鋭い突っ込みを見せる獲物を、ゆっくりと引き上げるように、ラインを巻き取っていく。

「型良さそうですね」

「無理せずに、ゆっくりと上げていきますね」と、Mさん。

やがて、海面に大きな真鯛が姿を見せた。

75センチ、4.3キロの見事な真鯛。

産卵前なら、優に5キロは行っていただろう。

神経締めをして、血抜きをする。

すると、今度は徹君にアタリが来た。

出足の針はずれがあるだけに、慎重にラインを巻き上げている。

「この時間を楽しんでね」

真鯛独特の竿先を叩く引きを堪能しながら、巻き上げていく。

55センチ、2.1キロの良型真鯛。

「嬉しいですね」と、笑顔が良い。

しかし、直ぐに潮の動きが鈍くなってしまう。

その度に、ポイントを移動しながら、潮の動きがあるところを探す。

頑張っている仲間達とも連絡を取り合いながら、潮の状況を確認する。

徐々に、南東の風も強く吹き始めているのも、気になる。

そんな中、Mさんにアタリが来た。

「なんか、引きが違う感じです」

真鯛の叩く感じが無い。

重量感はあるが、何か違う。

上がってきたのは、サメだった。

私は、サメの目つきが大嫌い。

足で踏みつけて、針を外して海に帰す。

南東の風が風波を起こすようになり、沖合での釣りは着底が取りづらくなってきた。

強くなってきた南東の風の影響もあり、1.5ノット前後で船が流されるようになってきた。

再びポイントを移動する。

ここでも、小型のサメが針掛かりしてくる。

「3匹目ですね」と、Mさんも苦笑い。

そんなMさんに、又してもアタリが来た。

最初に「サメかな…」と、疑ってしまう。

サメが連発していただけに、仕方ない。

「でも、少し叩きますね」

「もしかしたら、真鯛かもですね」

不安と期待を持って、海中に目を凝らす。

やがて、獲物が見えてきた。

「真鯛ですね」

大きな真鯛が、海面に浮いてきた。

73センチ、4.3キロのどっしりとした雄の真鯛。

「凄いですね」

Mさんのゆっくりとして、相手を怒らせないような竿のあしらいは、ただただ、お見事と感心してみていた。

Mさんが真鯛を釣り上げた直後、徹君に強烈なアタリ。

針掛かりと同時に、相手が疾走。

「可成り走られました」

慌てず、ゆっくりと巻きに掛かる。

何度目かの突っ込みが来たとき、竿先が元に戻った。

仕掛けを回収すると「針が切られています…」と、口惜しい状況。

「青物かもしれない…真鯛かな…」

仕掛けの作り直しも考えたが、強くなってきた南東の風を考え「残念だけど、帰りましょう」

南東の風を背に受けて、帰港した。