開進丸
4月9日 海に雄叫び
最近は、浅場から入ることが多かった。
今日は従兄弟の信司と一緒に「チョイ深場から行ってみようか」と、港を出る。
西風が穏やかで、良い釣り日和。
でも、少し気になるウネリが南から入っていた。
このウネリ、後でチョットばかし、バタバタすることになる。
ベイト反応は出ている。
今日は、潮も全体的に青味が入り、ゆっくりと北に流れている。
「昨日の潮目が全体に広がってきたみたいね」
信司が竿を出す。
潮は北に向かい、風は北西の風と、潮と風がぶつかる感じになっている。
「船が回転するね」
風と潮に併せて、釣りやすいように船の向きを調整する。
信司の竿にアタリが来た。
ジジッーとドラッグ音がする。
次の瞬間「オアー!」針が外れた。
今日最初の雄叫びが上がった。
「あんだけ走って、外れるかね…」
「まだ来るが」
次を期待して、竿を出す。
「来た。来ました」
小気味よい引きを楽しんで、レンコダイが上がってきた。
「取り敢えず、一枚出てホッとしたね」
次のアタリも、直ぐに来た。
「来た。来ました2枚目ですね」
良型のレンコダイが上がってきた。
「塩焼きにすると、真鯛よりも美味しいって聞きました」
「そうやとか。それは、俺も知らない」
明日の可愛い息子の入学式に、後は真鯛が欲しい。
ところが、急に北西の風が強くなってきた。
暫くは、様子を見ていたが、岸方向からの白波が立つようになってきた。
「取り敢えず、場所を移動して、風を避けるか」
大島の陰になるところまで、船を走らせる。
大島の陰に入って、暫くすると「少し風が収まってきたかな」と、水島沖に出てみる。
ここからは、私も信司と一緒に竿を出すことにした。
二流し目に私にアタリが来た。
「信司来たよ」と、自慢しようとした時、針が外れた。
「オアーッ、何でか…」今日2度目の雄叫びが上がる。
二人で交互に、雄叫びを上げてしまった。
「場所を変えよう」
ポイントを移動した先の潮は、もっと速かった。
西南西の風もどんどん強くなってくるし、潮は速いし、潮と風が同じ方向に向かっているしで、船がどんどん流されていく。
それでも、途中途中でアタリは来る。
ドラッグ音が鳴り、ラインが走るくらいのアタリだ。
「来た!おわっ、外れた!」
風に向かって、雄叫び。
「何で外れる!」
針先を確認したり、ドラッグ調整したりして、何とか取りたい。
針先を確認したとき「信司、針が折れてる…」
私の鯛ラバの針が、折れていた。
「口が堅い奴、大きな真鯛かな」
仕掛けを取り替えて、次を狙おうとしたが、風が西南西の風が強くなってきた。
南からのウネリも、波長が船の引き波みたいに短くなってきた。
「信司、波とウネリが妙な感じになってきた。今日は口惜しいけど諦めよう」
「そうですね。変な波になってきましたね」
口惜しい雄叫びだけを残して、帰港した。