開進丸
11月17日 その季節が来た
風と雨、そしてウネリを覚悟して、船を出してみた。
大島の北側から沖合に出てみた時、海上自衛隊の掃海艇群が、南東方向から油津港に向けて進んでくるのが見えた。
「今年も、この時期になったのか」
「ソナーの電波で、魚が居なくなるのかな」
「いつまで訓練時期になっているのかな」
Sさんと話をしながら、船を進めていく。
今日天気が悪くなる前に、少しでも竿を出したいと思っていたポイント付近に掃海艇が居る。
去年も訓練海域に気づかずに、慌てて移動したことがある。
どこかに旗でも立っているはずと思うが、気が付かない。
「暫く、水島の南に入りましょう」
グズグズしていると、風が変わって波が出てくるといけない。
移動して直ぐに竿を出す。
何度か船を流すうちに、段々と北東から高いウネリが来るようになってきた。
「来た。何か来た」
Sさんがアタリを捕らえた。
「結構引きますよ」
上がってきたのは、4キロのニベ。
「良かった。今日はいつまで釣りが出来るか分からないだけにお土産が出来た」と、ホッとした表情。
この後、北東の風も徐々に強くなり、波も高くなってきた。
「ポイントを移動しましょう」
次に内場の方に移動する。
目の前には、大きな掃海艇が泊まっている。
その掃海艇を見ながら流していく。
Sさんにアタリが来た。
2キロ近いオオモンハタが上がってきた。
「良い型が来た」
「雨が降る前で良かったですね」
東の空に雨雲が広がってきた。
雨のことを気にしていると、又してもアタリが来た。
竿が良い曲がりをしている。
「何やろか」
「又、ハタだったらいいですね」
姿を見せたのは、ハンマーヘッド。
「うわっ、久し振りに鮫が来た」
小さいとは言っても、鮫は良い気持ちではない。
写真だけ撮って、直ぐに海に帰す。
「雨も降ってきましたし、帰りますか」
私も、Sさんも雨が激しくなるのは避けたいと思っている。
港に帰り着くと、掃海艇が並んで接岸していた。
いつも、ソナーに悩まされる、その季節になった。