1月22日 朝間詰め勝負
予報では午前9時頃から、北西の強風が吹くと言っている。

「朝間詰めが勝負ですね」

「吹いて来るんでしょうね」

関屋さんと、風の心配をしながら6時30分過ぎに出船する。

水温と気温差が激しいときに起こる「気嵐」の中、最近では好調だと思われるポイントを目指す。

夜明け前は「凪になってますね」と、穏やかな状況。

しかし、暫く走ってポイントにはいると、真西の風が既に吹き始めていた。

「この風は、真西ですね」

「今のうちに勝負しましよう」

西風に押されるように、船は東方向に流される。

「流れる速さは、0.7ノット前後です」

潮の色自体は、青みがあって良い感じだ。

関屋さんが、ジグを落としてベイトの中を攻めていく。

「魚探には、海底から浮き上がったベイトが映っています」

真西の風が、徐々に強くなる。

その分、仕掛けが段々と斜めになって行くが、着底は取れている。

一流し目は、アタリ無し。

「コースを変えて、瀬の上を流していきます」

満潮の潮止まり前だが、下潮は動いている。

「来た!」

関屋さんが、アタリを捕らえた。

竿先が気持ちよく曲がり、引き味を楽しませてくれる。

「どんな感じですか」

「最初は強く引いたけど、後はそれ程でもない」

獲物が浮いてきた。

「ヒラメだ」

上がってきたのは、キロ超の良型ヒラメ。

「今が旬の魚ですね」

「よかった。1枚上がれば、後は楽に行けますね」

「さあ、今から」と、気合いは入る。

しかし、この頃から風が北西に変わり始めた。

船を戻す度に、船首で波飛沫が上がる。

風の勢いも段々と強くなり始め、風が起こす波と波長の短いウネリで、船が揺れ始めた。

近くにいた仲間は「先に帰ります」と、港に帰っていった。

他の処にいる仲間にも、連絡する。

「風波が高くなってきて、釣りにならないので帰ろうと思います」

「そうやね。危なくなる前に帰ろうか」

関屋さんも、この状況は見えている。

「限界ですね。帰りましょう」

9時30分過ぎ、高くなった波と北西の強風の中、波飛沫を被りながら帰港した。