初春の南紀浮きアオリイカ釣り
浮きアオリイカ釣りのツノダです。今回は第29回目の釣行記。前回の第28弾で、真冬のアオリ釣りについて紹介させていただきました。そして、今回は真冬から季節が急に進みだした初春の浮きアオリ釣りについてお伝えさせていただきます。
2月下旬から3月上旬、和歌山県南紀エリアでは海水温が上昇、17度で安定し、日によっては黒潮の反転流が当たっている周参見や白浜では、アオリイカの釣果情報が上がる。釣行当日、海水温が高いエリアが周参見町周辺であったため同エリアに向け紀伊半島を南下する。
昼2時。すさみ道の駅近くの森下商店(電話0739-58-1111)で活きアジを12匹購入する。活きアジのイケスの前で、番犬いちが、迎えてくれる。
雌の豆柴を飼っているため、自分が雌犬の匂いがするらしく、雄のいちが懐ついてくれる。その姿を見て、店員さんが親しげに話しをしてくれる。
「昨年、紀伊水道を3回も大型台風が通過したため、海底の地形が変わってしまって、いままで釣れていたところでアオリイカが釣れなくなった。」
確かに、今シーズン、南紀エリアでのアオリイカ釣りを苦戦し、例年と比べて、アオリイカが少なく、小さいと感じていた。
続けて、「アオリイカが釣れないため、地元の人がアオリイカ釣りをしなくなった。」という。
確かに、今シーズン、地元のアオリイカ釣り人を見かけることがない。異常に感じていた。
ダメなイメージの話を払拭し、釣れそうな雰囲気の場所を探しますと店員に挨拶し、番犬いちと別れた。
周参見町の地磯で水深が深く、潮通し良く、ベイトが多い場所を探す
グレ釣り師が釣りをしていた場所が空くようだ。グレ釣り師が早朝から撒き餌をしてくれているため、足元にはベイトが多数確認できる。潮目が地磯に向かって当たり、潮の流れも抜群に良さそうだ。しかも水深が足元でも10メートルもあり、目的の条件と一致する。しかも、この時期のアオリイカポイントとしては、鉄板ポイントである。
地磯まで、パワーポンプで元気に活きアジを搬送する。
夕方5時、実釣開始
3投目。沖へ沖へと浮きが流れた瞬間、竿受けに置いている竿がひん曲がり、ドラッグが逆回転。慌てて、竿を手にする。恐ろしい重量とスピードで沖へと走られる。竿を立てた瞬間、フックオフ。回収した仕掛けを回収すると、アジの鼻掛け用の4号チヌ針が伸ばされ、さらに、イカ針も伸ばされている。ブリクラスか?群れで接岸するケースが多いため、同行者に、青物が当たるかもと伝えた、つぎの瞬間、同行者の足元5メートルの位置にあった浮きがスパッと消し込み、猛烈な勢いで沖へと走った。あまりの衝撃で、同行者は竿を竿受けから外せない。力を出し、竿を竿受けから何とか外し、竿を立て、リールを巻こうとする同行者。リールが負けないと叫ぶ。イカに合わせた強度にドラッグに合わせているため当然だ。次の瞬間、同行者は、ドラッグを締めて、ごり巻きを試みようとした瞬間、パチンっとラインブレイク。離れた位置から、「締めたらあかん!」と叫んだ瞬間の出来事であった。磯場で青物がヒットした場合、沖へと走らせ、沖の深場で、数10分やり取りをして、沖で青物を浮かしてから、寄せてくるのが、鉄則である。ドラッグを締めると、青物がその場で潜り、磯場の浅場のため、磯にラインに擦れラインブレイクに繋がるのだ。
グレ釣り師の撒き餌のおかげで、足元にベイトが集まり、潮目に乗って、接岸したブリが、地磯の足元まで接岸し、アジを補食したのだろう。あの相当なる重量感だけが左手に残る。
青物タイムも終わり、アオリに集中すると
日が暮れ、海から釣れる雰囲気が漂う。実績からも日暮れの時間から2時間ぐらいまでが、最も過去に釣っている。
次の瞬間、浮きが海中にジワーと沈み、海中1メートルあたりで、ボワーっと電気ウキの灯りが海面を照らす。糸ふけをとると、アオリ独特の重量感が竿先から伝わる。海面の位置から自身後方へと大きく合わせる。竿がひん曲がり、アオリ独特のジェット噴射で抵抗され、やり取りが始まる。この、合わせた後の竿の曲がりとジェット噴射が、最も緊張するタイミングだ。潮の重みと潮の流れに、アオリが乗り、デカアオリの登場かと期待をしたが、サイズはキロクラスに留まった。
デカアオリではないが、綺麗な個体であり、貴重な1杯だ。
連続ヒットを期待したが、やはり今シーズンは厳しいのか当たりがない。例年であれば、当たりのあった位置に仕掛けを再投入すれば、連続ヒットするのではあるが。
悪いことに、仕掛けを魚に切られる当たりが続く。同行者が、ヨロリを釣り、仕掛けを切る魚の正体が判明したところで、撤収とした。
まだ残る、昨年の台風の影響
森下商店の店員さんの「3度の台風で海底の地形が変わり、アオリが釣れなくなった。」という言葉が耳から離れず、次の釣行では、台風の影響を受けなかったであろう、ワンド奥の波や風の影響を受けにくいポイントで竿を出すこととした。
森下商店で(電話0739-58-1111)で活きアジを12匹購入。番犬いちを触ってから、ワンド奥のポイントへと向かう。
ワンド奥なら、台風の影響も少なく、底の地形も変わっていないだろうと考えた。夕方5時。浮きがスパッと海中に消えた。糸ふけをとると、ゴンゴンと重たい魚が尻尾を振る感触が竿から伝わると同時に力いっぱい合わせる。竿がひん曲がり、ドラッグが逆回転。ラインを10メートル沖に出された時点で魚が止まり、ラインを巻きだせる。この時点で、青物でないことが分かる。青物であれば、100メートルほど走られるためだ。重たい重量感だが、泳ぐのは苦手。潜るように泳ぐ。やり取りをしながら、経験上、あいつが相手だと確信し、やる気も失いかけるが、ゲームとしては、重量感、潜り方、ほどほどの走り等があり、面白い。水面に姿を見せたのは、もちろん、サメである。「日中から登場するかっ!」と叫びながら、やり取りを楽しむ。水面に浮かしても、空気を吸わしても、恐ろしいほどの生命力から何度も繰り返して潜ることができる。数分後、なんとかゲームに勝利。
サメを遠ざけた後「アオリ乗りました!」の声が
サメがいるとアオリは、まず当たらない。サメの内蔵や血を海に入れ、周りのサメに危険を知らして、サメをその場から遠ざけなければならない。残酷ではあるが、そうしなければ、サメがその場に居つき、その釣り場は、サメに侵される。サメの腹を裂き、内臓を取り、出血している状態で海にサメを返しても、サメは元気に泳いでいった。昔から地元の釣り師や漁師が漁場を守るためにサメをこのような形で駆除してくれていたと聞く。
周りのサメが遠ざかることを期待し、日暮れの時間を迎える。釣れる雰囲気が漂う日暮れから2時間の最も実績のある時間帯に、同行者が「アオリ乗りました!」と叫ぶ。
サメ退治の効果あり!と喜んでいると
自分の浮きも海中にスパッと消し込んだのを確認する。糸ふけをとり、渾身の合わせを入れる。
続いて、地磯の根元にいる護岸上の同行者から、こっちも乗りました。という叫び声が聞こえる。
さらに、その隣の同行者からも、乗りました。という叫び声が聞こえる。
今回の浮きアオリイカ釣りはゲスト満載!
サメを退治してから、アオリ、アオリ、マゴチ、アナゴと怒涛の連続ヒットで、大盛り上がりだ。
ただ、例年であれば、アオリの当たりがもっとあってもいいのではあるが。
台風の影響が少なかっただろう、海底の地形が変わっていないだろうワンド奥エリアで竿をだしたが、釣果に劇的な変化はなく、南紀エリアの今シーズンの厳しさを改めて痛感することとなった。次は、どこで、どのような対策で、アオリを狙おうか、情報を精査して、次回に活かしていければと思う。
撤収後、車に乗り込む前に、63センチのマゴチを捕獲した同行者の記念撮影をする。写真は、鮮明に思い出に残るため、全体の魚体が納まるように、映りが良く撮影することを心掛ける。同行者に写真を見て、映り映えを満足してもらえたことで、撮影終了。
今回は、ブリのヒットから始まり、ヨロリ、サメ、マゴチ、アナゴとゲストの登場が多かったが、これも、ウキアオリ釣りの醍醐味のひとつ。活きアジを泳がしているため、本命のアオリ以外にも多種のゲストが登場することも楽しみの一つである。