ソルトルアーのショアゲームで使うベイトタックルについて考える【ずん氏連載 vol.2】
ショアゲーム用のベイトタックルについて考える
先月の釣行でのロッドの破損に加え、熱中症にかかり嫁から愛の(?)釣行禁止令を発令され、私にとって波乱の幕開だった8月。釣行が解禁されたのは下旬だった。
同じタイミングで芳しくなかった海の状況もよくなったようで、ぽつぽつと有力な釣果情報も耳にするようになった。
小型ながらネリゴ(カンパチ幼魚)やヤズ(ブリ幼魚)の回遊や、アオリイカの好調、その他根魚など、なかなか落ちない気温とは対極的に、海は秋の訪れを感じさせるだけの状況変化をしているようだ。
しかし、今回も恥ずかしながら良い釣果は出なかったので、私が一年を通して振り回しているベイトタックルについて書こうと思う。
ベイトタックルを使う意味
「ちゃんと飛ぶの?」「難しくない?」よく聞かれるが、この質問にはっきりした答えは用意していない。ショアゲーム用のベイトタックルはまだまだ発展途上で、飛距離・操作性のほか、防水性、ドラグの安定感等、課題は山積みだ。お勧めはできないが、使えなくもないグレーゾーンのタックルと言えるだろう。
私の場合、慣れるまでには予想を超える生贄をささげる羽目になった。使い始めてから2年間はトラブルだらけで、リールは5台、ラインに至っては100回分はダメにしている。そこまでやってまだ満足していないのだから、間違いなく手軽なものとは言えないだろう。
そうまでしてなぜベイトタックルなのか?答えは単純で、めちゃくちゃ楽しいからだ。
大物を掛けたときのダイレクト感と、高まる興奮と緊張感。ベイトタックルを使う上でメリットはちゃんとあるが、この面白さこそが最大のメリットではないだろうか。
ベイトタックルを活かす釣りの展開
ベイトタックルでの釣りを有利に展開するためには、まずデメリットに目を向けるべきだと思う。
まずは飛距離。同程度のルアーを投げばラインの太さは違えど、スピニングに軍配が上がる。大きなデメリットだが、逆に活かす手もある。飛ばないのならその分手返しが上がる。さらにベイトは回収→キャストへのモションは最短0秒。クラッチを切るだけだから当然キャスト回数にも差がつく。
続いて細糸に対応しない点。ドラグの安定感もそうだが、最大の難点は、細糸は食い込む上に軽度のバックラッシュで高切れしてしまう。ベイトフィネス以外の細糸使用は厳禁レベルでお勧めできない。しかしベイトで細糸を使うメリットがあるだろうか?
ベイトは太糸を使っても飛距離が落ちにくい。ドラグに関しても滑らかさこそ劣れど、魚を止める前提に設定された高いドラグ力、細糸なんて使う必要がない。
以上2点からベイトタックルの利点、「手返し」と「強引なやり取り」が見えてくる。そしてその利点を最大限に活かせるのが「地磯のランガン」だ。この利点を最大限に活かした釣りがしたくて、今回は長崎県西海市大島周辺を巡ってきた。
ポイントとルアー選び
大島とその周辺エリアは遠浅の地磯が多く、場所によってはルアーを投じるのを躊躇うほど荒れた地形もある。パワーファイト前提のベイトタックルにはうってつけのフィールドだ。
そのなかで私がポイントを絞る基準は「ベイト(小魚)の有無」「潮流」「深場の隣接」の3つだ。
「ベイトの有無」は、真夏は見つけられたら儲けもの、カタクチなんかが居ればそれだけで投げる価値がある。
「潮流」は、動いていればOKというわけではない。強い筋状の流れがシャローに差したり、瀬やカケアガリにぶつかったり、巻いていたりと潮流の変化があるポイントを狙う。
「深場の隣接」、これはとても重要で、多くのフィッシュイーターは摂餌の際にシャローに上がってくる。逆に言えば食うタイミング以外は1段下のディープにいることが多い。
浅場と深場が隣接しているということは、それだけ魚にとっても都合がいいことだ。
上記の条件を探しながら、今回メインに通したのはミノーだ。手返しが早いのでランガン向き。しかし重心移動が組み込まれていて、キャスト時にバランスを崩さないものでなければ、バックラッシュに繋がるので相性のいいものを探しておいたほうがいい。
私のおすすめはエバーグリーンのトゥルーラウンド115F。18g程度の軽量なわりに相当荒れていても、バランスを崩さず飛んでちゃんと泳ぐ。量販店で手に入るルアーでこれほど使いやすいリップレスミノーは今現在見当たらない。それでいてよく釣れるのだからランガンにはもってこいだ。
潮が流れない苦しい状況
潮回りが小さいこともあり、思い当たるポイントを回るも「潮流」の条件を満たせない場所ばかり。そこで、地形が生み出す流れを探すことにした。
狙ったのは島の橋の下。この橋の下というのは、日本各所で実績の高いスポットになりやすい。何故かといえば海上の橋はたいてい陸と陸を結ぶ上で、距離の短く済む場所に建設される。陸と陸に挟まれた狭い海域は、わずかな潮汐の変化で激しく動くからだ。
ここ大島も例外ではなく、潮の動きが悪い時は必ず橋の下をチェックしている。
やっと条件が揃うポイントを見つけた。投げてみると1投目にバイト。しかし乗らない。
もう1投。やはり乗らない。3フックのミノーにかえてやっとヒット。
釣れたのは小ぶりなネリゴ。1kg前後が釣れているという情報を聞いていたので、もう少し大きい奴がいるはず。同じポイントにもう1投。すぐにバイトがあるがまた乗らない。意地になって投げ続け、何度かバイトはあるが乗らず、を繰り返しているうちに、潮流が変わりバイトはなくなった。
ここで大きな失敗に気づく。先ほどのネリゴとのやり取りの最中に瀬にぶつかったらしく、針先が潰れていたのだ。釣れると冷静さを失う悪い癖が祟った。
戦略変更、プラグでの釣りをあきらめる。
橋の下を離れ、また条件が一致する場所を探すが、見つからない。ふと冷静になり、ジグを使うことを決意。欲が出てプラグでの釣果にこだわりすぎており、思い返せばジグなら届く範囲に潮が通っているのに、試すことはせずスルーしていた。時間はもう日暮れ前。大島を離れ、下見だけで終わっていた堤防に向かった。
案の定ジグでギリギリ届く距離ではまだ潮が通っていた。その潮がぶつかるカケアガリにキャスト。着底を待たずしてヒット!30cm程度のアコウだ。
しかし残り時間が少ない。必死に投げ続けるが夜になり時間切れ、しぶしぶ納竿した。
意地を捨て、冷静さを欠いていなければ、もっといい釣果になっていたのかもしれない。
釣行後気を付けておきたいこと
ベイトリールは基本、防水性が「ない」。高い低いの話ではなく、水の侵入は一切防げないと思っていい。「そんなリール使えるか!」と思われるかもしれないが、これも弱点の逆利用。海水がじゃぶじゃぶ入るのだから、じゃぶじゃぶ洗い流せば塩分も流れ落ちる。
洗い方はドラグを締めて、シャワーで30秒ほど水をかけるだけ。釣行後すぐにこれをやることで、塩が結晶化する前に流れ落ちる。あとは、ボディの下部にある水抜き穴を下にしておいておけばOK。
注意点は、お湯ではなく水で洗い流すこと。そして、洗っている最中にハンドルを回さないこと。1発でグリスが落ちてしまう。私はこれをやって過去3台のリールをダメにした。
当然たまにはグリスアップもしなければいけない。私が今使っているアブのロキサーニパワーシューターは、グリス注入が簡単にできる設計になっているのでおすすめ。分解に自信がなければ釣具屋に出そう。