1月7日 響く雄叫び

目指したポイントは、波が高かった。

北に流れる潮と、北東から吹き付ける風がぶつかって、波が立っていた。

「折角ここまで来ましたが、内場に行きましょう」

沖合のポイントを目指して走っていた他の船も、内場に入ってきた。

内場では、上り潮の動きがイマイチ良くない。

ペイト反応はそこそこに有るのだが、アタリに繋がらない。

苦戦する時間が続く中、塩田さんにアタリが来た。

イトヨリダイが上がってきた。

まずまずの良型だ。

ガンゾウヒラメに真鯖もヒット。

真鯖は丸々としている。

しかし、なかなか本命とする真鯛や青物が、ヒットしてこない。

「ちょっと、波とウネリを覚悟で沖に出てみますか」

北東からの風が、強くウネリも高い。

時折、目線を越えるウネリが寄せてくる。

魚探には、ベイト柱が出ている。

脇坂さんが直ぐにジグを落として、30センチくらいの鯖がヒット。

「塩田さん、生き餌が釣れましたよ」

塩田さんが、強竿のダイワマッドバイパーSPMをセット。

狙いは“大物”に的を絞る。

反応は、早い段階で出てきた。

生き餌につけた鯖が暴れ出した。

「何か来てますよ」

竿先が海面に突っ込んだ。

「まだ、まだですよ!」

もう一回、突っ込むのを待つ。

「突っ込んだ!」

塩田さんの強烈な合わせが入る。

強竿が豪快に曲がる。

巻き上げに電動リールが唸りをあげる。

ところが…竿先が跳ねた…。

「あーっ抜けた!!!」

えさの鯖がズタズタになって上がってきた。

「あーっ!!!」

塩田さんの、悔しい雄叫びが2度大海原に響いた。

私も脇坂さんも、同様に雄叫びが出た。

“大物”は、確かに生き餌の鯖をくわえた。

合わせの段階で、うまく針が掛からなかった。

塩田さんの、悔しさあふれる雄叫びは、我々の声でもある。

「合わせに失敗して、逃がしたものは仕方ない。次こそは取る!」

気持ちを整えて、午前の釣りを終えた。

午後からは、牛衛さん、三浦さんと交代する。

「夕間詰めに釣りがしたい」

牛衛さん達を乗せて、港を出る。

表に出られない分、ボーズもあり得るかも…。

内場に入り、潮の流れ風の向きを考えて、流すコースを決めていく。

牛衛さんにアタリが来た。

ガンゾウヒラメが上がってきた。

三浦さんにもアタリが来た。

ガンゾウヒラメが上がってきた。

「初めて釣り上げた魚種です」

普段は、サーフが中心で船釣りは初めてとの事だった。

まずは、これでボーズではない。

ちょっとだけだが、気持ちは一安心と言ったところだ。

夕間詰めに掛けて、真鯛をターゲットに竿を振る。

しかし、思うように潮が動かない。

三浦さんにアタリが来た。

今度は、良型のイトヨリダイが上がってきた。

この後、干潮の潮止まりになった。

「ちょっと、流すコースを変えましょう」

潟寄りのコースを流す。

ベイト反応は、良い反応が出ている。

しかし、潮の流れる速さが0.2ノット前後と、ほぼ停船状態。

そんな中、牛衛さんにアタリが来た。

小型だが真鯛が来た。

「今年初の真鯛です」と、笑顔。

牛衛さんの笑顔に、わたしも少しだけホッとした。

この後、夕間詰め時間ぎりぎりまで粘ったが、牛衛さんの真鯛を最後にアタリが出なかった。