9月21日 冷たい雨
まだ夜明け前の薄暗い内から、小雨がパラパラしていた。

「多分、午前中くらいは持つでしょう」

「激しく降ることは無いでしょう」

天気予報では、最高温度が24度位だったと思う。

何とかなるさ、と言う気持ちで船着き場を離れた。

風は、西風が少し強めには吹いている。

潮の色は「少しは濁りが取れたかな…」くらいの感じだ。

今日は、船先輩の大磯先輩と一緒に、同じポイントに入っている。

「なんかベイトが少ない気がする」

大磯先輩が、魚探を見て釣りができるポイントを探している。

私も同様に、スローで走りながらポイント探し。

潮の流れと風とを考慮して、ポイントを決める。

一流し目に、西村さんにヒット。

「何か来ました。でも、余り引きが強くない」

何だろうと、タモを用意しているとタチウオが上がってきた。

指3本クラスの、まずまずの型だ。

何度か船を戻して、ベイトの居るところを流していると大磯先輩の声がした。

「こっちやど!カンパチがきたど!」

可成り離れたところから、西風に乗って声が届いた。

西村さんが「良くこの距離で聞こえますね」と、ビックリしている。

釣りのことなら、地獄耳になれるかも。

船を戻して、二隻で流していく。

すると、西村さんに強烈なアタリが来た。

「おおっ、来た!リールが巻けない」

一度もリールが巻けないまま、耐えていたらリーダーが切られた。

「激しいアタリやった…」

今度は、私に来た。

海面近くに来てからの抵抗が凄い。

2キロ近いハガツオが上がってきた。

直ぐ近くで、大磯先輩もアタリが連発している。

「あっ、外れた!」

声が聞こえてくる。

しかし、一旦は上がったかなと思っていた雨が、又、パラパラと降り始めた。

「冷たいし、ちょっと寒い感じですね」

もう一枚、合羽を持ってくるべきだった。

暫くすると「リールが調子悪くなった」と、大磯先輩から連絡が来た。

船上で色々と調整してみるが、不調の様子。

鯖や真鯛、イトヨリ鯛とポツポツ当たり出してきただけに、気持ちは悔しいだろうなと推察する。

リールの調子が戻らないまま「先に帰る」と、合図が来た。

大磯先輩の船が見えなくなって、暫くは頑張っていた私たちだったが…。

「帰りますか?」

冷たい雨が、止む気配がない。

「帰りましょうか」

もう少し粘りたかったが、冷たい雨とちょっぴりの寒さを避けて、帰港した。

船着き場で、大磯先輩と西村さんと私の3人の釣り談義に、少しだけ暖かさが戻ってきた。