1月16日 気合いを込めて
「明日は、午後から用事が入っているので、12時には帰港するよ」

「大丈夫です。ポイントを絞って粘ります」

「了解。じゃあ、行きましょう」

「6時30分前に出発できますか」

「大丈夫よ。頑張ろうや」

昨日の脇坂さんとの会話の一部。

まだ暗いうちに、船着き場を離れポイントを目指す。

「今日も、寒鰤が出ると良いね」

「巧くいかないのが釣りですよ。でも、狙いますよ」

ポイントにはいると、北西の風が吹き始め、少し風波が立ち始めた。

「昨日と潮の流れが違うね。でも、ベイトは纏まっているし、一部は蛇行しているよ」

「なんか追いかけていますかね」

「ベイトの群れに、穴が空いているし、隙間がある。可能性は有ると思う」

脇坂さんが、アタリを捕らえた。

竿先が、バタバタと叩かれるようなアタリだ。

「鯛かもしれない」

上がってきたのは、キロ弱の真鯛。

針が背中を貫通している。

「群れでジグにじゃれついているのかな」

次の当たりも直ぐに来て、良型の真鯖が上がってきた。

水平線のお日様が、暖かい日差しを照らしてくれる時間になると、北西の風が止み始めた。

「ちょっと、移動してみる」

「沖のポイントですか。行きますよ」

「じゃ、ちょっと走るね」

東方向に船首を向けて、ポイントを目指す。

ポイントにはいると、止んだと思っていた北西の風が白波を起こして吹いていた。

「風に流されるかも…」

仕掛けを入れると、1.1ノット位で北東に流れる。

船を戻して、再度流し直していると、沈み瀬の落ち込みの処にベイトが固まっている。

「もう一度、船を戻すから、直ぐに落としてみてよ」

「了解です」

船を流す位置を決めて、釣りを再開。

「潮の色が、変わってきたね」

「黒い感じになってきましたね。黒潮が違い位置に有るようですね」

すると、脇坂さんの竿がいきなりアタリを捕らえた。

「おおっ、なんか来た」

ぎっちり締めてあるはずのドラッグから、ラインが出ていく。

手で押さえて、糸の出を止めたい。

「止まらん。止まらんど」

「あっ…」

いきなり竿先が真っ直ぐになった。

「針が外れた」

「なんやったろうか」

「わからんけど、強かった」

潮が変わって気がつくと、潮目が目の前にある。

「仕掛けを入れてん」

気を取り直して、脇坂さんが仕掛けを入れる。

「来た!ホール中になんか来た」

結構に走りを見せている。

上がってきたのは、丸々として厚味のあるサワラ。

「良い感じの引きやった」

「今日は塩干しにしようかな」

「逃げた奴は、又捕まえようや」

「そうしましょう」

帰り支度をしながら、笑顔で会話する。

北の風が強くなってきたこともあり、12時少し前に帰港した。